検索窓
今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:5,496 hit

9*さようならをしなくちゃ ページ10

やはり、そのカードはお前の物だ―――櫂はそう言い残して颯爽と姿を消した。
三和も置いて行かれまいとその後を追ったので、店内には二人の従業員の他はアイチとAが残されるだけとなった。


『…改めて。おめでとうございます、先導君』

「え、あ、ありがとうございます…?」

『私も行きますね』

「あ…あのっ、君の名前…」


Aはアイチの言葉を遮るように靴音を鳴らして振り向いた。


『今日、貴方に会えて良かったです。ありがとう。さようなら。先導君』


アイチの顔をろくに捉えないまま、Aはスカートを翻して駆け出した。

笑ってさよならを言える日が来るなんて思いもしなかった。
Aはまた一つ、心の奥底で燻っていた火種を鎮める事が出来たと思うと、僅かな安堵と、懐かしい罪悪感に襲われる。

残るのは微かな寂しさ。
自分がこんな人間でなければ、もしかしたら。
放課後に声を掛け合うでもなく集まって、一緒にカードファイトに興じるような友人になれていたのかもしれない。

そう思うと、のんびり歩き直す気にはとてもなれなかった。



*・*・*・*・*



「………あのさ」

「へっ!?あっ、はい」


Aに置いて行かれた形で呆然と立ち尽くすアイチに、女性店員がカウンターの中から声を掛けた。
店員は澄ました顔で、カウンター脇のボードを無言で指し示す。


「…?えっ!うわっ!す、すみません!」

「いい」

「えっ…?」


慌てて財布を探しにカバンの中を漁った手を止めた。アイチの表情は、不思議そうに固まっている。
彼女は頬杖を解かないままじっとアイチを見つめる。


「あの子が払ってったよ。アンタ達の勝負に水差さないようにね」

「え…」

「よく分かんないけどさ。お礼の一つは言っといてもバチ当たんないんじゃないの?」

「………」


アイチは頷くことも忘れて、Aの姿を思い出していた。
あれだけの濃い時間を一緒に過ごした筈なのに、ずっと隣に居てくれたと頭では分かっているのに……思い出されるのは別れ際の寂しそうな笑顔だけだった。
それでいいとはとても思えない。

そっとポケットの中の学生手帳に手を伸ばしかけて、止まった。
ブラスターブレードはもうデッキの中に居る事を思い出して、ほんの少しだけ心許ない気持ちになった。



...

すまない…店長が終始空気ですまない…。

10*遅ればせながら、ごあいさつ→←8*たのしいが終わる時



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
設定タグ:ヴァンガード , 先導アイチ , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:うすしお | 作成日時:2019年6月20日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。