10*遅ればせながら、ごあいさつ ページ11
放課後の帰る道すがら、Aはまた足を止めた。
見知った店の前で、同じ学校の制服に身を包んだ幼い少女が成人男性に絡まれている。
知人同士であるなら首を突っ込むのも野暮というものだが、少女の方はやや仰け反って後退りしている。
少なくとも穏やかなシーンではないとAは判断し、特攻せんと踵を返した。
『その子は私と同じ学校の児童です。彼女が何か?』
かつん、と靴音高くAはよく通る声をぶつけた。
しかしエプロン姿の男性の方は思わぬ反応を見せた。
「おや!この間の!もしかしてヴァンガードに興味を持って頂けましたか?」
ぱっと明るい表情で気安く話を振って来たのだ。
しかも自分は覚えが無いが向こうは自分の事を知っているらしい。
Aは戸惑いを顔に出す代わりに訝しげに表情を歪めた。
『? この間…?確かに一度だけこのお店にお邪魔させて頂きましたけど…』
「えっ!?あれっ!?ぼ、僕も居たんですけど覚えてません?!」
『えぇ…?』
Aの反応が芳しくないせいか、空気がゴロゴロと不穏な雰囲気を帯び始める。
Aは自然と少女を抱き込んで守る体勢になり、少女も思わずAに駆け寄って制服を握っている。
一回限りの入店を体験したあの日を出来る限り忠実になぞって、ようやくぼんやりと思い描く事に成功した。
確かに、男性店員が一人居合わせていたような。しかも一緒にアイチと櫂のファイトの解説をしてくれていたような。
『あー…そう言われてみれば…そうだったような…』
「そ…そうですか…。えーっと、改めまして店長の新田シンです」
『それは失礼しました。ご丁寧にありがとうございます。AAと申します』
何故か店の前で深々とお辞儀をする二人だが、この妙な光景に口を挟む度胸のある人間は惜しくもこの場に存在しないのだった。
...
ヤムチャしてんのは自覚している。
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作者名:うすしお | 作成日時:2019年6月20日 2時