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康二くんとご飯に行った翌日。
私は仕事帰りにスーパーに寄った。
もちろん目的は買い物。
冷蔵庫の中が空に近づいてきたから買い物に来ただけ。
でも私はスーパーに入った瞬間、やたらとピンクに飾られている商品棚に目を奪われてしまい、その前でもう数十分立ち止まっている。
バレンタイン…。
そうか、明日はバレンタインか…。
会社ではもうバレンタインというイベントはしなくなったから意識することもなかったし、基本的に会社と家を往復するだけの私は世間がバレンタイン色に染まってきていることにも気づいていなかった。
明日の朝も康二くんに会うし、この前のお礼も兼ねてチョコレートを渡そうか、でもバレンタインにチョコって好きですって言ってるみたいになって、これから気まずくなってしまわないか…？
お礼と言って渡せば大丈夫だろうか？
渡すとして、どんなものを渡すのがいいか…。
しばらくバレンタインから遠ざかっていた私は他のお客さんの目も気にならないくらい、その棚の前で考え込んでしまった。
そして次の日、いつも通り、バスに乗り込んできた康二くんは私の隣に座った。
「康二くん、これ、この前のお礼…。」
そう言って昨日買ったチョコレートを渡す。
康「え！？もろてええの！？」
「う、うん。」
康「うわ、めっちゃ嬉しい！！」
「良かった、喜んでもらえて。」
康「そりゃ喜ぶよ！！あー、でも、お礼かぁ…。」
ちょっとだけ残念そうに言う康二くん。
康「今年はお礼として受け取るけど、来年は本命チョコ貰えるように頑張るな？」
意を決して、という感じで私の目を真っ直ぐに見つめてそう言う康二くんは、今までで一番男の人の顔をしていて…。
子犬っぽさなんてどこにもなくて…。
私の心臓を騒がせた。
「え…？」
康「俺、もっともっと頑張るわ。Aちゃんに好きになってもらえるように。」
かっこいい笑顔でそう言って、ほな、ありがとうな。と降りていった康二くん。
鏡で見なくても今自分の顔が赤いことがわかる。
「あんなの…ずるい…。」
康二くんの気持ちを知ると同時に、自分の気持ちにも気づいてしまったバレンタイン。
来年はきっと、本命チョコを渡すことになりそうだ。
END
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作者名：柊李 | 作成日時：2023年2月13日 22時
