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ついに満足のいく出来のマフィンが完成した。
これはかなりの自信作だ。
百均で買ってきた箱と袋で可愛くラッピングをする練習もした。
もちろんそれはまた学校の友達行きなんだけど。
そして明日のバレンタインに向けて、練習の成果を発揮する時がやってきた。
練習の甲斐もあり、とても上手に焼けたマフィン。粗熱をとりながら調理器具を片付けていると、店を閉めた両親が帰ってきた。
母「あら、上手に焼けてるわね〜、美味しそう!」
「でしょ?自信作!」
父「お、本当だなぁ、さすが俺の娘だ。」
そう言ってマフィンを眺めるお父さんにお皿に二つマフィンを乗せて渡す。
「はい、一日早いけど、ハッピーバレンタイン!」
父「おぉ、ありがとうなぁ!」
ニコニコと嬉しそうにするお父さんを見て、お母さんもニコニコしている。
お母さんの分も、と一つ渡す。
二人はせっかくだから焼き立てを、とすぐに食べてくれて、めちゃくちゃ美味しいと絶賛してくれた。
ますます自信が持てる。
翔太くんの分を、練習した通りに可愛くラッピングをして、それ以外は簡易放送で友チョコに。
潰れてしまわないように大きめの紙袋に入れて、明日の学校の準備の隣へ。
準備は万端。
あとは渡すだけ。
そわそわとドキドキが入り混じったなんとも言えない気持ちでベッドに入った。
そしてバレンタイン当日。
学校に行って友チョコを交換し、帰りにはその友達にも応援してもらって気合を入れた。
翔太くんに渡す。好きって言う。
それだけを胸に酒屋を目指す。
もう少しで…というところで酒屋の前に翔太くんがいるのが見えた。
そしてもう一人、綺麗な女性も。
女「翔太、受け取ってよ。」
翔「ごめん、気持ちは嬉しいけど受け取れない。」
女「なんで?」
翔「なんでも。」
女「彼女いないんでしょ?」
翔「いないけど。」
女「受け取るくらいしてくれれば良いのに…もういい。」
決して盗み聞きをしようとしたわけではない。
声が聞こえたきて咄嗟に隠れてしまって、聞こえてしまっただけだ。
コツ、コツとヒールを履きこなした女性の足音が遠ざかる。
あんな綺麗な人からのチョコも受け取らないなら、私のなんてきっともっとだめだ。
さっきまでの気合いは一瞬にして消えてしまい、隠れたその場から動けなかった。
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作者名:柊李 | 作成日時:2023年2月13日 22時