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翔太くんはお酒の樽や重いケースを運ぶからいつも軍手をしている。
その軍手と少し捲り上げられた袖の間に見える腕はめちゃくちゃムキムキって感じじゃないのに重いものを軽々運んでしまう。
私はいつもそんな姿にもキュンとしている。
私の家に着いて、母親は荷物を運んでくれた翔太くんにお礼と行って筑前煮をタッパーに詰めて渡していた。
「翔太くん、お仕事なのにごめんね。本当にありがとう。」
翔「おう、気にすんなって。」
そう言って軍手を外して本日二度目の頭ポンポン。
翔太くんは私の頭を撫でる時、必ず軍手を外す。
そう言うとこも好きだなぁって思う。
そんな風に好きを積み重ねる毎日を過ごしていたある日、お母さんがまたお父さんのお風呂中にニコニコと話しかけてきた。
母「ねぇA、あんたバレンタインどうすんの?」
「あ、もうそんな時期か…。」
母「そんな時期か…じゃないわよ!就活も一息ついたんだし、翔太くん渡せば?」
「うーん…お世話になってるしね、いつもありがとうってことで渡そっかな。」
母「なーに言ってんの!渡すなら本命でしょ!ちゃんと告白しなきゃ!!あんた来年からしばらくここ離れて働くんだし、なかなか会えなくなるんだよ?」
確かに。
私は少し遠い街の飲食店に就職が決まり、来年からは一人暮らしをすることも決まっている。
今みたいに翔太くんと会えなくなる。
「そ…か…。」
母「がんばんなさい!」
「うん…わかった。頑張ってみる。」
私の返事に満足そうに微笑み、お父さんの分も忘れちゃダメよ、なんて笑ってるお母さんに心の中で感謝した。
私は一週間後のバレンタインに向けて、準備を始めた。
何を作るのか悩みに悩んで甘すぎないチョコレートマフィンに決定し、材料にもこだわった。
製菓専門ではないにしても調理の専門学校に通ったんだからとびきりおいしいものを作って渡したい。
私は何度も何度も試作して、お母さんに食べてもらったり、学校の友人に食べてもらったりして改良に改良を重ねた。
流石にバレンタインをこっそり楽しみにしているお父さんに試作を食べさせるわけにはいかないのでお父さんにはバレないようにこっそりと。
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作者名:柊李 | 作成日時:2023年2月13日 22時