・ ページ12
蓮「それよりさ、さっきのカイロのお礼が欲しいなー。」
「え？善意じゃないの？」
蓮「善意だけど。」
「何がお望みですか？」
蓮「先生の連絡先。」
「なんで？」
蓮「せっかく先生に会えたんだし、と思って。大学のこととか話聞いてほしいなぁ…。」
「…まぁ良いけど。」
そう言ってLINEのQRを表示させて見せれば、目黒くんはそれをサッと読み取りニコニコしてる。
「大丈夫だと思うけど、流出させないでよ？」
蓮「もちろん、誰にも教えないよ。」
「じゃあね、カイロありがと。」
紙コップが空になったので、私は帰ることにした。
蓮「また連絡するー！」
そう言ってニコニコと手を振る目黒くんに、友達か？と心の中でつっこみ、ゆるゆるっと手を振りかえして神社を後にした。
目黒蓮、私が新任だった時に高校三年生で、私が現文を担当したクラスにいた子。
見た目良くて、スポーツも出来るものだからとてもモテていたという印象があるが、同時に勉強が出来ないと言う印象もある。
私の同期は6人いて、その中の二人が女だった。
基本テンション低めで堅物な私と、いつもニコニコと愛想良くて優しい雰囲気の同期。
そりゃあ同期の方が好かれるに決まっている。
私はそれで良かったし、選んだ職業ではあるけど、仕事は仕事、生きるための手段って思ってるから無理に生徒に好かれようなんて考えもしなかった。
それなのに、そんな私にいち早く懐いた目黒くん。
挨拶はもちろん、休み時間に廊下で会えば声をかけてくるし、授業中もよく話しかけてきてた。
重いものを運んでいたときに手伝ってくれたり、部活中でも私を見つけて手を振ってきて顧問の先生に怒られていたり、思い返せば目黒くんとの思い出が結構ある。
珍しい子。
そう思いながらも嬉しい気持ちはもちろんあったし、嫌なことやしんどいことがあっても目黒くんとの会話で癒された。
あの時の教え子たち、もう成人か…。
なんて感傷に浸りながら適当につけたテレビを眺めていると、スマホが鳴った。
画面に映し出されているのは着信画面。
しかも今日再会した目黒くんから。
「もしもし。」
蓮「あ！出た！」
「どうしたの？」
蓮「んー、話したいなぁって思ったから電話しちゃった！」
「何かあった？」
蓮「何も？」
「え？」
蓮「なんか先生と話したかっただけ。ってか声聞きたかっただけ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 240人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊李 | 作成日時：2023年2月13日 22時
