元教え子（目黒蓮） ページ11
2023年、1月1日。
年が明けて夜中のうちに初詣、なんてことをする元気があるわけもなく、私はゆっくりと起きてご飯を食べてから、つまり昼過ぎに神社へと向かった。
昼過ぎともなれば参拝者の列もそう長くはなく、思っていたよりもスムーズに先頭まで辿り着くことが出来た。
“今年も健康で過ごせますように、楽しいことがいっぱいありますように。”
欲張りかな？とは思いながらもどちらも捨て難い願いなので、しっかり願ってから社務所へ。
おみくじを引けば大吉。
恋愛、待ち人来たる。
仕事、安心して励んでよし。
うん、悪くない。さすが大吉。いいことしか書いてない。
丁寧に折りたたんで財布の中へ仕舞う。
初詣の最後には無料で振る舞われている清酒をいただいて帰る。
神社でいただくお酒を飲むってきっと縁起がいいから。
これが毎年お決まりのパターンだ。
紙コップに清酒をいただき、境内でも人の少なそうな端の方でゆっくり飲む。
蓮「あれ？A先生？」
聞き覚えのある声に呼ばれて視線を向ければ、そこには私と同じ紙コップを持ったかつての教え子がいた。
「………目黒くん。」
蓮「え、今ちょっと俺のこと忘れてました？」
「いや、そんなことはないよ、パッと名前が出て来なかっただけ。」
蓮「あ、明けましておめでとうございます。」
「あ、うん、明けましておめでとうございます。」
蓮「先生一人？」
「そうだよ。」
蓮「初詣一緒に来る彼氏いないの？」
「…余計なお世話。」
蓮「ふーん、いないんだ、よかった。」
「何が？」
蓮「何にも。」
「元気そうだね。」
蓮「先生は寒そうだね。」
「寒いね、ちょっと薄着すぎたかも。」
コートは着ているけど、中はそんなに厚着していないから、確かに寒い。
蓮「これあげる。」
そう言って紙コップを持っていない方の手でカイロを渡してくれた。
「ありがと。良いの？」
蓮「うん、俺結構手はあったかいからさ、あんま必要ないんだよ。」
「そっか、じゃあ遠慮なく。ていうか、それ、お酒だよね？」
蓮「うん、先生が飲んでんのと一緒の。」
「ダメじゃん。」
蓮「ふはっ、なんでよ、俺もうすぐ21になるんだよ？」
「…嘘だ…。」
蓮「高校卒業して三年だからね？」
月日が過ぎるのはなんて早いんだ…。
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作者名：柊李 | 作成日時：2023年2月13日 22時
