覚醒めて歩く先に 偽物 ページ35
ぺちゃ、ずちゃ、ぱち、ぺたん。
濡れた地面は徐々に終わりを告げ、舗装された道に出る。
どうやら私は靴を履いておらず、裸足のまま歩いていたようだ。
ぬかるみのほうがどれだけありがたかったか、身に染みる。
あの暗闇の道からここまで、体感時間40分ほどか。
おそらくそれ以上だが、手渡されたカンテラの光は未だ消えない。
やはり恐ろしい気もするが、それより歩いて、あの赤丸へと向かわねば。
そう思い直して、前を向く。
――そうして、どれほど歩いただろうか。
眼の前には明かりの灯る町が広がっていた。
暗闇の中でぽつんとある町は、まるで希望の灯火のようだ。
そんな事を考えながら光に向かって歩き続ける。
光を反射した硝子板が私の姿を映す。
ふと気になって見てみると、私の容姿はどこか非現実的であり作られたものであると感じる。
なぜそんな事を考えたのか分からないが、恐らく「
目を逸らして、前へ前へと歩く。
――カンテラの光が消えた。
その建物を見上げると、大きな屋敷だった。
きっとここに、「
コンコン。軽めに叩いたつもりのノックは割と大きな音で鳴ってしまって、周りの迷惑でないか気になってしまった。
しかし誰も現れないので不思議に思いドアノブに手をかけると。
開いていた。
不審に思いながらもきぃと鳴るドアを押して中へ入る。
「どなたか……誰か、いらっしゃいますか?」
ぐしゃりと音が出るほど地図を握りしめて、叫んでいるとも呟いているともつかない声音で誰かを呼んでみるも、誰からの返答もない。
背筋に冷たいものが流れていく感覚を味わい、恐怖を感じて屋敷の中をぐるぐると歩き回る。
そしてあるドアの前。
ピン、とくるものがあってそのドアを開けてみると、どこかで見たことのある内装の部屋だった。
テーブルと、座布団。あとパソコン。それしかない部屋にとてつもない安心感を抱いて、ほうっと涙が流れる。
長い間歩き続けたこと、隠してはいたが実はとんでもなく怖くて寂しくて辛かったこと、すべてを放り投げて倒れ込んだ。
硬い床が頭も体も殴打するがそんなの関係ない、耐えきれない疲労からの眠気の誘いに乗ってそのまま目を閉じた。
【――お疲れ様】
恐怖を感じて飛び跳ねた声も、今では子守唄のように、優しく感じる。
お片付けしないとね 【名無しのチート】→←何もやることがない 白雪の鴉亭
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グランディ(プロフ) - 続編完成しました〜ありがたや (2019年6月16日 15時) (レス) id: 12bfae36c2 (このIDを非表示/違反報告)
澪 -rei-(プロフ) - 更新しました! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 72f8d10893 (このIDを非表示/違反報告)
澪 -rei-(プロフ) - 更新します! (2019年6月16日 13時) (レス) id: 72f8d10893 (このIDを非表示/違反報告)
Na(ナトリウム)(プロフ) - 終わりました! (2019年6月16日 13時) (レス) id: d4cffa305a (このIDを非表示/違反報告)
Na(ナトリウム)(プロフ) - 更新します! (2019年6月16日 12時) (レス) id: d4cffa305a (このIDを非表示/違反報告)
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