Raptor【WT】

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ドスドスという足音と共にやってきたのは鬼怒田開発室長

ボーダー基地やトリガーの開発などに関する業務を担当している

基地の壁に穴が空いてしまったせいで激怒しながらやってきた


しかし穴を開けたのが玉狛の雨取だと知ると手のひらを返したかのように穏やかになった

トリオン量に恵まれたことを両親に感謝しなさいと言いながら彼女の頭を撫でている

ロリコンなのではないかと騒ぐ佐鳥と瀬鳴

確かにこの状況だけを見たらそう思っても仕方がない




｢離れて暮らしている娘さんと重なっているんだろう
たしか歳も同じくらいだったはずだ｣

｢でも限りなくアウトに近いですよ｣

｢まあ見逃してやってくれ｣




東のフォローの甲斐あって佐鳥と瀬鳴は口を噤んだ

確かに離れている娘がいるのであればあの行動も理解できる範疇にはあるがやはりアウトに近い

瀬鳴は首を傾げながら唸った


そんなとき狙撃用訓練施設から誰かが雨取の名前を叫びながらやってきた

誰だろうかと視線を向けるとB級隊員と思われる隊服を着た少年と白髪の少年がいる

二人の肩には玉狛のエンブレム

彼らも雨取と同じく玉狛支部所属のようだ

それを見た瀬鳴は思い出しかのようにハッとして口元を押さえた


瀬鳴は1ヶ月ほど前に黒トリガー奪還計画の妨害に参加してから何となく気まずくて鬼怒田と顔を合わせないようにしていた

鬼怒田は基本的に会議室や開発室にいる

それに瀬鳴のサイドエフェクトを使えば彼と鉢合わせないように過ごすことができる

そうやって1ヶ月過ごしていたというのに今こうして鬼怒田と同じ空間にいる

これに関しては不可抗力だろう

気付かれる前に逃げようと扉に向かっていると鬼怒田の声が響いた

恐る恐る振り返るとバッチリ目が合っている




｢瀬鳴！お前いつまで逃げるつもりだ！｣

｢うわぁん！怒らないでください！私は悪いことしてないです〜！｣

｢我々を裏切り玉狛側についておきながらよくそんなことが言えるな！｣

｢無派閥なんです！許してください！｣




半泣きになりながら荒船の陰に隠れる瀬鳴

鬼怒田は彼女を指差しながら言葉を続けた

彼女の言う通り瀬鳴は無派閥

どちらの肩を持つわけではない

けれどもボーダートップのトリオン量を誇る彼女の存在感は大きいことは事実

彼女がどこかに属すると均衡が崩れることになる

つまり先日の黒トリガー奪還計画はまさにそうなってしまったわけだ

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