過去編(第五章) ページ36
妃旗side
帰還して１ヶ月の入院生活を経て何とかボーダーに復帰した私を待ち受けていたのはとても心地がいいものではなかった
同情や興味など様々な視線を向けられあちこちでありもしない噂話が行き交っていた
それらを否定してまわるほど暇ではない
とにかく鈍った感覚を取り戻さなければならない
不幸中の幸いと言うべきだろうか
あんな経験をしたというのに一切トラウマを抱えることなく再びトリガーを握っている自分に嫌気が差した
とはいえ精神的には大丈夫でも身体的に与えられたダメージは大きくトリオン量の減少はかなりの痛手と思い知る
今までのように好き勝手にトリオンを使えないのだと思うと自分の行動が狭まったような気がして息が詰まる
とにかく経験を積むしかない
今の自分を把握して出来ることを模索する
ランク戦をするべく久しぶりにブースに足を運んだ
顔見知りがぼちぼちいるようだが皆やはり気を使っているのか話しかけてはこない
まるで腫れ物に触れるような態度
適当に空いているブースに入り対戦相手が来ては勝負をする作業を繰り返しているとあっという間に時間が過ぎた
誰も彼も格下ばかりで調整にすらならない
誰か腕のいい隊員が来ないかと待っていると珍しい人を見つけた
｢二宮さんランク戦しません？｣
｢……その前に少し話がしたい｣
じっと私を見る二宮さん
断られると思っていたのに意外な答えが返ってきて驚きつつも彼の要求に従った
この場では話しにくいことだったのかラウンジに向かった
時間帯的にラウンジに人は少なく私たちの他にC級隊員が少しいるくらいだ
ご馳走してもらったジュースを飲んでいると二宮さんが口を開いた
｢今回の遠征で篠田さんが人を撃ったと聞いた｣
｢…人っていうか私たちを､ですけどね｣
｢……そうか｣
｢元から彼方さんは撃てる人間でしたよ､ただ色々重なって撃たなくなっただけ｣
だから鳩原さんとは違う
そこまで言葉にしなくても二宮さんは理解しただろう
彼が私と話すことなんて彼女のことしかない
何か助言がほしかったのだろうけど彼方さんが撃った対象が私たちだと知り踏み込めなくなったようだ
流石に二宮さんでも今の私には気を使っているようだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 822人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弓月有無％(プロフ) - コメント失礼致します！！描写力が凄くて過去編まで来て思わず悲涙？落涙してしまいました、ストーリーも迚も読みやすく面白かったです！また気が向いたら更新して下さると嬉しいです、他作品も拝読させて頂きます。無理のない程に頑張って下さい是から応援しております (4月27日 20時) (
レス) @page39 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 更新ありがとうございます！嬉しいです！！ (2022年10月16日 22時) (レス) id: 88c8eec9ab (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 更新してくださり本当にありがとうございます！！めちゃくちゃうれしいです涙 (2022年9月27日 19時) (レス) @page33 id: c4a16c735a (このIDを非表示/違反報告)
仔犬(プロフ) - 続き楽しみにしてます！ (2022年9月25日 20時) (レス) @page32 id: 8b2aa36d50 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しく思います。待ってます。 (2022年5月30日 23時) (レス) id: e6820645c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ばぐ
| 作成日時：2020年12月2日 20時
