検索窓
今日:41 hit、昨日:113 hit、合計:529,243 hit

ページ43

.






Aさんは私より視野が広くて多くのことを常に考えている人だ


だからきっと今も何かを考えている


箸が進まないAさんのお弁当はほとんど減っていない




視線の先には稲荷崎高校の選手たちがいた


その中に高校No.1セッターとして有名な宮侑さんもいる


ユース合宿で交流があったようで開会式の直後も親しげに話していた




そんな彼らが負けたことが少なからずAさんに影響を与えているんだと思う


私が思うよりずっと感受性の強いAさんは思うことも多いのだろう






「3回戦コートに入ってみない?」


「え!?コートの中ですか!?」


「そう スコアもバッチリだし…」






唐突な話に思わず声を荒らげてしまった



確かにスコアはミスなく書けるようになったしマネージャーとしての一連の流れは分かる


だけどやっぱり緊張する


選手と一緒に最前線で試合に出るだなんて想像するだけで手汗が出てくる




それにもしも…もしも3回戦で負けることになったら?


最後の試合は私よりAさんがコートにいた方がいいに決まっている


選手の皆さんだってそう思うに違いない







「私には無理です…」


「…そっか」






せっかく私にチャンスをくれたのに断ってしまったことが申し訳なくて俯いた


Aさんは小さく答えたあと続けた







「私の知り合い…いや友達でね環ちゃんと同い年のマネージャーがいるの

その子はね春高でコートに入ったんだ」



「なんて言ってました…?」



「すっごく緊張した 怖かったって」







同い年の体験談に耳を傾けた


そうだよなぁと頭を抱えるとAさんは楽しそうにケラケラ笑った







「私も初めてマネージャーとしてコートに入った時は物凄く緊張した」


「Aさんが、ですか?」







Aさんだって緊張するってことくらいは分かるけどイメージできない


いつも落ち着いていてあまり感情が表に出てこないせいかもしれない


私の問いにAさんは懐かしそうに笑って教えてくれた






「だけどね すごく楽しかった

コートの中で見るバレーは観客席で見るバレーの何倍も楽しいよ


だから環ちゃんにも早くこの気持ちを体験してほしいの」







そう言ったAさんは本当に楽しそうで少しだけ興味が湧いた


それにいつかは私もコート中に入る日が来る







「私 3回戦コートに入りたいです!」







そう言うとAさんは優しく笑った

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (430 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
826人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

らおう - ほんと俺に面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2021年6月20日 17時) (レス) id: 167c20847a (このIDを非表示/違反報告)
Rena.(プロフ) - 稲荷崎のジャージって赤系の色だった気がするのですが… (2020年7月29日 20時) (レス) id: 1c1efba1d7 (このIDを非表示/違反報告)
rye(プロフ) - 46ページの鴎台の台が対になってますよ、! (2020年5月3日 18時) (レス) id: 17d389d2ff (このIDを非表示/違反報告)
コハク(プロフ) - 更新ありがとうございます!続き楽しみにしてます! (2020年4月29日 9時) (レス) id: 204a8dc5ce (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - 犬になりたいさん» ありがとうございます!やはり夢がある女の子はかっこいいですよね!更新頑張ります! (2020年4月28日 17時) (レス) id: f0730c5fd6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ばぐ | 作成日時:2020年4月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。