客人 ページ16
「蛍原少女! 客人が見えているぞ!」
『師匠。客人って、私にですか?』
「そうだ!」
甘露寺さんと同様、気配なく庭に現れた煉獄さん。
私は首を傾げながら、縁側から立ち上がる。
客人って、誰だろう?
私が煉獄家に滞在していることをを知っている知人は、それこそ今晩任務に向かうという炭治郎くらいしか……。
「玄関のすぐ横の客間に通している! 早く行ってやるといい!」
『はい!』
「照れて逃げるAちゃん、乙女っぽくて可愛い〜!」
『だから違いますって!』
「後でお茶とお茶菓子、持っていきますね」
『ありがとう、千寿郎くん』
『お待たせしました。蛍原Aです』
そう声をかけて、客間の障子を開ける。
すると障子の隙間から、尻尾を揺らした茜が飛び出してきた。
『え、茜?』
「一仕事シテキタデスゥ!」
「その狐さんに、ここまで案内して頂いたんです」
『貴方は、照久山での……!』
「ご無沙汰してます。先日は本当にありがとうございました」
客間の座布団に正座していた少女は、私を見るなり深々と頭を下げた。
私は茜を抱き上げながら、客間に入って障子を閉める。
『よかった、無事だったんですね。お元気そうで何よりです』
私がそう言うと、藍色の着物を着た少女は顔を上げて柔らかく微笑む。
肌は以前よりも血色がよく、綺麗に梳かされた長髪がさらさらと揺れる。
座敷牢の時とは似ても似つかないが、間違いなくあの家に囚われていた少女だ。
「はい。私は山を降りてすぐに、麓の医者のお世話になって……つい最近、ようやく遠出の許可を貰えたんです。お礼を言いに来るのがこんなにも遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
『そんな、お礼なんていいですよ。鬼を斬るのが、私の仕事なので』
少女の向かいの座布団に座り、軽く会釈する。
すると少女は眉を下げて悲しげな表情を浮かべ、俯き気味に言う。
「今日はその……この前のお礼と、聞きたいことがあってきたんです」
『聞きたいこと……? 私に答えられることなら、なんでも聞いてください!』
少女は唇をぎゅっと噛み締めて拳を握り、真っ直ぐに私を見つめて問いかける。
「A姉。私のこと、覚えてる……?」
『……っ!』
彼女の言葉に、私は静かに目を見開いた。
A姉。
懐かしい。昔私が家族から呼ばれていた呼び名だ。
その呼び名で私を呼ぶということは、もしかして……
『……沙代? もしかして、沙代なの?』
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時