【鬼滅の刃】鬼殺隊の狐は絆を紡ぐ

家族だから ページ19

私は知っている。


『やっと見つけた！ ほーら。皆にちゃんと謝って、早く帰ろう？』

「……ちっ、わかったよ」


「ん」

『え？ どうしたの、この果物』

「今日、A姉の誕生日だろ。だから……」

『っ！ ありがとう獪岳！』


「そっち、俺が持つ」

『でも、こっち結構野菜とか入ってて重たいよ？』

「いいから！ 俺が持つ！」

『ふふっ、ありがとうね』


獪岳は少しひねくれたところもあるけど、思いやりのある優しい子だ。
あの寺で衣食住を共にしている間、獪岳を苦に感じたことは一度もなかった。

『確かに、寺のお金を盗むことも、私達を身代わりにしたことも、誉められたものじゃないよ。でも、お金を盗んだのには何か理由があるんだと思う。それに、死の恐怖を直前にして尚、他人を思う余裕がある人の方が少ないと思うの』

沙代はぱちぱちと目を瞬かせると、眉根を寄せ苦しげに言う。

「でも、獪岳が鬼を招かなければ……っ」

『何より私は、皆を殺した鬼の言葉を真に受けたくない』

「っ！」

私が語気を強めて言うと、沙代は口をつぐんで目を伏せた。

『獪岳本人の口から真実が聞きたい。でも、それがどのようなものであれ、皆が殺されたのは事実。だから皆のお墓を回って、獪岳にちゃんと謝らせるよ。もし先生に会うことができたら、先生にも謝るの。それで、もしできることなら……』


＿＿また、皆で一緒に暮らしたい。


そんな夢物語、不可能なのはわかっているし、あえて口にしようとは思わないけれど。
そう思っているのが、私だけじゃなかったらいいなって。

「……A姉は、どうしていつも獪岳に甘いの？」

『そんなことないよ。皆平等に接しているつもり。獪岳も沙代も皆、私の大切な家族だもん。勿論、沙代のことも大好きだよ』

沙代は納得のいかなそうな顔をしつつ、私の胸に頭を押し付けるようにして倒れ込んでくる。

「……私も、A姉のことは大切な家族だと思ってるよ。今でもA姉のことが大好き。だからこそ……鬼との危険な戦いはしてほしくないし、あの頃みたいにずっと側にいてほしいって思ってる」

『……ごめんね』

私がそう言って沙代を抱き締めると、沙代は苦笑を浮かべながら顔を上げる。

「うん。A姉の意志が曲がらないのも、私なんかが止められないのも、最初からわかってた。だから……A姉は、私の前からいなくなったりしないでね」

『大丈夫。私は、皆のお姉ちゃんだから。そう簡単に殺られたりしないよ』

鬼を連れた隊士→←命乞いした子供

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す