煙草 ページ5
燃えたぎる炎がを眺めながら、タバコを手に取り、そこら辺の炎から火を貰い、大きくなりすぎたのをふるって小さくする。
そして口をつければ、大して美味くもない煙が肺へと流れ込む。
…トラファルガー、いや。ローがここにいるのは知っていた。なんでここにいるのかも知っている。
なぜなら、彼は俺と同じ人物に縁があったからだ。
俺は、彼の存在を兄のように思っていたし、大切な人の1人だ。
俺の周りで、初めて大切に思った人が死んだ。
…これはAとしての記憶での話だ。
ロシナンテ。彼は俺が海軍に拾われる前からセンゴクさんの元にいた。
俺が拾われたのが6つの頃だから、ロシナンテさんは17。ちょうどロシナンテさんが海軍に入って9年目の頃だったはずだ。
俺は、ガープ先生に可愛がられていた。毎日のハードスケジュール。おかげで今、俺はなんでも出来るようになっている訳だが。
…ロシナンテさんとの馴れ初めは、食堂だった。
俺が入って1年後くらいの話だった。まだその頃は将校のマントもつけていなかった俺は、珍しく本部の食堂に1人足を運んでいた。
気をつけてトレーを持っていたのだが、気をつけすぎたのだろう。前が見えてなかった俺は、何かにぶつかった。この場合の何かというのは勿論人であるのだが。
結構勢いよくぶつかったので、トレーは前倒し、トレーの上にあったスープや水なんかは全部こぼした上、その相手にかかってしまった。
『あ、ご、ごめんなさいっ！火傷はないですかっ、あぁ、お洋服が…！』
「あ、あぁ！こっちこそごめんな。お前に怪我はなかったか？ごめんなぁ、俺がドジっ子なばっかりに…！」
しゃがみこんで俺の体に怪我がないことを確認して安心した様子の彼は、もう一度俺が持っていたのと同じメニューを注文して、席までわざわざ食事を持って行ってくれた。
初めましての相手にここまでのことをさせてしまって、俺はひたすらに申し訳なさで落ち着けなかった。
いつもはガープ先生と食事をとっていたのもあるのだろう。周りの人の喧騒も相まってとてもじゃないが落ち着けなかった。
ふと、辺りが静かになった。びっくりして周りを見たが、人がいなくなったわけではなかった。
「びっくりさせちまったか？俺はロシナンテっていうんだ。ナギナギの実の無音人間！
…いつもはガープさんと一緒で静かな時に飯食ってて、今みたいに騒がしいとおちつかねーんだろ。」
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作者名：みるつき | 作成日時：2022年11月3日 2時
