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5話 マズッた ページ5
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「あるよ。」
そう返した俺に有栖は俺のことじっと見つめる。
しばらく俺のことを見つめてから口を開く。
「そうですか。」
思ったよりも簡単な返事で拍子抜けする俺。
有栖は微笑む。
その微笑みは悲しそうでもあり、諦めに近かった。
その表情を見て俺は青ざめる。
まずった。
これは彼女が期待してた返事じゃなかったんだ。
今、有栖はこの質問をすることで、自分の存在意義について疑問を持っていることを言いたかったんだ。
この質問について真正面に答えても無駄だったのは、明らかだった。
それを察してやらず、励ましてもやらず、期待はずれな答えをしたからこんなに悲しそうな顔をしたんだ。
彼女はろくに話したこともない赤の他人の俺にでさえ助けを求めなくちゃいけないほど悩んでたのに、俺は無神経な返し方を市のかもしれにあ。
自分に舌打ちしそうになる。
そう思いながらも必死で頭を回転させる。
「なんでそんなこと聞くの。」
それに有栖がうっすら笑う。
黒木みたいな笑みだとまた思ってしまう。
全てを自分で抱え込むような笑い方。
こんな表情にさせたのは俺のせいだよな。
これについて責任をとらなきゃなんねーよな。
なんでこんなに辛そうな顔をするのか、これはトラウマなのか、それとも一時的なものなのか。
すごく気になったし、なぜか赤の他人なのに俺が目を離したらダメになってしまうような気がした。
．
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作者名：デラ | 作成日時：2021年1月17日 8時
