迎えに来る藍ちゃん ページ9
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見慣れた景色なのに、高さが違うだけでこんなに違う。
藍の背中に乗せられて、夜風で少し冷えたと思った身体がまた熱くなったのは、
気のせいか。
「…重くない?」
「んーちょっと」
「っ、やっぱ降ろしてっ」
「あー暴れんなって嘘嘘!ごめん」
大人しく藍の首に手を回してくっつくと、藍の香りがする。
シャンプーか柔軟剤か、
甘くて、いい香り。
「呑みすぎんなって言ったろ〜」
「…ごめん、」
後ろでこっそり藍を堪能していたら、突然のお説教。
思わず身体を小さくする。
「もう俺いないところで呑むの禁止な」
「えっ…」
「なーんてな、そこまでは言わない」
…少しだけ、ほんとに少しだけ、
藍の独占欲が垣間見れた気がして、
胸が、きゅんと小さく鳴った。
「……藍がタイプだって、」
「え!誰が!?」
「…さっき、会社の女の子が言ってたの聞こえちゃった…」
「うわー!まじかー!やっぱ俺ってモテんだなあ〜」
「……嬉しそうにしないでよ」
「妬いた?」
「……」
「ふふ」
「…何も言ってない」
「いやーさ、Aも俺とおんなじだなあって」
「え…?」
「電話」
電話、というのは同僚の彼がしてくれた連絡のことだろうか
……あ、
「Aからの電話かと思ったら知らない男の声でさ、俺すげえイライラした。」
不貞腐れながら話す藍とは対照的に、
私は藍がヤキモチを妬いてくれたことが嬉しくて
「…藍」
「ん〜?」
「…迎えにきてくれてありがと」
照れ隠しとばかりに、抱きしめる腕に少し力を入れた。
「おっ、だいたーん。どした?」
「…落とされないように」
「落とすわけねえだろ〜」
「…藍、好きだよ」
「……酔ってんの?」
夜風で冷やされた頭は、いくらかさっきよりはっきりしている。
ちゃんと自覚あるよ、
なんて言わないけど。
そうして抜け掛けのアルコールのせいにして、
揺れる背中の上で、
君を独占した。
「A?」
静かになったと思えば、俺の肩に頭を預けて眠る君。
…先程、Aの同僚の男から向けられた視線を思い出す。
聞かなくても、こいつが電話してた奴だと分かった。
周りに人がいたからか穏やかに装っていたけど、悔しいような、そんな目をしていた。
「…完全に敵視されてんなあ俺」
逃げていかないようにと、
Aの足をしっかりと支えて、
俺は君を独占した。
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どんたろす - いつも素敵な更新ありがとうございます!他の方のコメントで、キューちゃんと仲良くしてる彼女に嫉妬する藍ちゃんが見たい、という声がありました。もしその話を書く機会があれば、おまけで陣馬さんと父娘のように仲良くしてる姿にもヤキモキしてる藍ちゃんも是非! (2020年9月20日 2時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - 初めてのコメント失礼致します。読んでいてドキドキキュンキュンしっぱなしで最初から最後まで止まりませんでした!これからも更新を楽しみにしております! (2020年9月19日 21時) (レス) id: 329b271bd3 (このIDを非表示/違反報告)
MARI(プロフ) - こ、こんな彼氏が欲しい…いつもキュンキュンありがとうございます(笑)ドラマは終わってしまいましたが、楽しみにしてます! (2020年9月17日 17時) (レス) id: de6259910f (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - (前文の続き→)現在はリクエスト募集してないとのことなので、もしリクエストするなら…と、あれこれ妄想するのが最近の楽しみです。ドラマは終了しましたが、MIU熱は冷めません!今後も素敵な作品が続きますように!沢山の作品を、本当にありがとうございます! (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - 初めてコメントします。ねむさんの作品、凄く大好きです!ドラマの雰囲気を全く崩さず、藍ちゃんや志摩ちゃんの言動も、文章を読みながらリアルに想像出来ます。彼女の設定や性格も、読んでいて全く違和感無く、話がスッと頭に入ってきます。 (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむ | 作成日時:2020年8月2日 16時