藍ちゃん特製オムライス ページ3
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「お待たせ〜」
声と共に、藍はお皿をテーブルに置く。
私の家に置いてある可愛らしいお皿の上には、黄色いふんわりとした塊。
その上には、ケチャップで綺麗にハートマークが書かれていた。
「藍ちゃん特製、愛たっぷりオムライス〜。
藍だけに、なんてな」
自信満々にそう言って笑う藍。
「…ふっ、なにそれ」
そんな藍の様子に、思わず笑みが溢れた。
「やっと笑ったな」
ぽん、と頭に置かれた大きな手。
「A、こういう嘘付くの超下手」
……ああ、まずい
「すげえ泣きそうな顔してる」
頭に乗る手が、優しくて
「…なんかあった?」
そう問いかける声が、あまりに優しくて
既に限界だった涙腺を崩壊させるには十分だった。
ポロポロと涙が頬を伝う。
拭っても拭っても涙は止まってくれない。
「おいで」
眉を下げて笑う、
そして両手を広げて藍は私にそう言った。
もう我慢なんて忘れて藍の胸へ飛び込めば、
優しく背中に腕が回った。
あーあ、藍のお気に入りの服に涙ついちゃうな、
なんて頭の片隅に思いながら、
でも藍がそんなの構わないって言うみたいに強く抱きしめてくれるから、
子供みたいに藍の胸で泣いた。
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「落ち着いた?」
「ん、…」
私が泣き止むまで藍は私を抱きしめてくれていた。涙が引いた今も、まだ離す気配は無い。
「Aは頑張り屋さんだからなあ」
「そんなこと…」
「あるよ。Aはすげえ頑張り屋さん。俺が言うんだから間違いない」
確信的なものは何もないのに藍がはっきりとそう言い切るから、
なぜか不思議と少しだけ、自信が持てた。
「…ありがと、藍」
小さくお礼を言えば、藍に頭を撫でられる。
…今まで何度も、この優しい手に救われてきた。
「ねえ藍、」
「ん?」
「…食べたいな、藍のオムライス」
そう言うと藍は嬉しそうに微笑んだ。
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どんたろす - いつも素敵な更新ありがとうございます!他の方のコメントで、キューちゃんと仲良くしてる彼女に嫉妬する藍ちゃんが見たい、という声がありました。もしその話を書く機会があれば、おまけで陣馬さんと父娘のように仲良くしてる姿にもヤキモキしてる藍ちゃんも是非! (2020年9月20日 2時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - 初めてのコメント失礼致します。読んでいてドキドキキュンキュンしっぱなしで最初から最後まで止まりませんでした!これからも更新を楽しみにしております! (2020年9月19日 21時) (レス) id: 329b271bd3 (このIDを非表示/違反報告)
MARI(プロフ) - こ、こんな彼氏が欲しい…いつもキュンキュンありがとうございます(笑)ドラマは終わってしまいましたが、楽しみにしてます! (2020年9月17日 17時) (レス) id: de6259910f (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - (前文の続き→)現在はリクエスト募集してないとのことなので、もしリクエストするなら…と、あれこれ妄想するのが最近の楽しみです。ドラマは終了しましたが、MIU熱は冷めません!今後も素敵な作品が続きますように!沢山の作品を、本当にありがとうございます! (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - 初めてコメントします。ねむさんの作品、凄く大好きです!ドラマの雰囲気を全く崩さず、藍ちゃんや志摩ちゃんの言動も、文章を読みながらリアルに想像出来ます。彼女の設定や性格も、読んでいて全く違和感無く、話がスッと頭に入ってきます。 (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむ | 作成日時:2020年8月2日 16時