藍ちゃんと夏、海デート ページ11
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砂浜に座る藍にゆっくり近づいていく。
藍に近づけば近づくだけ、心拍が早くなった。
「…藍、お待たせ」
「おかえり〜、っ」
振り向きざまに言葉を放った口はそのままに、目をパチパチとさせて瞬きを繰り返す。
「いやあ…これはまずい…」
かと思えば、目を覆うようにサングラスに手を掛ける。
藍がよくするその仕草、
今はまるで私から視界を逸らすためのもののように見えてしまって、
「…やっぱり変、?」
やはり、攻めすぎただろうか。
もう少し無難で地味な方が、
「えっいや違う違う!」
慌てて訂正するように、藍は立ち上がって私と向き合う形になる。
「だからその…、あー、うん、
めっちゃくちゃ可愛い」
その言葉に胸ががきゅっ、となる。
藍の顔が少し赤いのは、気のせいだろうか。
日焼けをしたにしては時間が短い。
「…藍?」
「…っあーもう!」
顔を軽く覗き込めば、藍は慌てた様子で自分の着ていたパーカーを脱ぎ始める。
それと同時に、今度は私が照れる番だ。
藍は既に水着を履いていて、上には一枚パーカーを羽織っているだけ。
その一枚を脱いでしまえば否応にも藍の身体が目に入る。
一般的な男性と比べたら藍は細身な方なのに、職業もあってかこう見ると男らしくて案外しっかりしている。
藍の身体を初めて見るわけでもないのに、外でのイレギュラーな状況に、照れないなんて無理だ。
「はいはいはいはいこれ着てて」
照れる私はお構いなしに、藍は自分のパーカーを私に羽織らせる。
「えっ、なんで…」
「他の奴に見せたくない。だから着てて」
キッパリと伝えられた本音に私は思わず赤面する。
「…ありがと」
素直に受け取れば藍は満足そうに笑った。
夏の太陽みたいな、反射して輝く海みたいな、キラキラした笑顔。
お言葉に甘えて羽織った藍のパーカーに袖を通す。
男物なだけあってやはり少し大きくて、手がちょっとだけ隠れる。
じっとしていても藍の香りがして、水着の上に着ているだけに先程まで着ていた藍の温もりも直に感じられる。
まるで藍に抱きしめられているみたいで、
少しの恥ずかしさと、
なんとも言えない幸福感に包まれた。
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どんたろす - いつも素敵な更新ありがとうございます!他の方のコメントで、キューちゃんと仲良くしてる彼女に嫉妬する藍ちゃんが見たい、という声がありました。もしその話を書く機会があれば、おまけで陣馬さんと父娘のように仲良くしてる姿にもヤキモキしてる藍ちゃんも是非! (2020年9月20日 2時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - 初めてのコメント失礼致します。読んでいてドキドキキュンキュンしっぱなしで最初から最後まで止まりませんでした!これからも更新を楽しみにしております! (2020年9月19日 21時) (レス) id: 329b271bd3 (このIDを非表示/違反報告)
MARI(プロフ) - こ、こんな彼氏が欲しい…いつもキュンキュンありがとうございます(笑)ドラマは終わってしまいましたが、楽しみにしてます! (2020年9月17日 17時) (レス) id: de6259910f (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - (前文の続き→)現在はリクエスト募集してないとのことなので、もしリクエストするなら…と、あれこれ妄想するのが最近の楽しみです。ドラマは終了しましたが、MIU熱は冷めません!今後も素敵な作品が続きますように!沢山の作品を、本当にありがとうございます! (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
どんたろす - 初めてコメントします。ねむさんの作品、凄く大好きです!ドラマの雰囲気を全く崩さず、藍ちゃんや志摩ちゃんの言動も、文章を読みながらリアルに想像出来ます。彼女の設定や性格も、読んでいて全く違和感無く、話がスッと頭に入ってきます。 (2020年9月8日 16時) (レス) id: 9081917f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむ | 作成日時:2020年8月2日 16時