31歩目 ページ34
1日、蒼は不機嫌だった。もちろん、桐島麗にバレないように細心の注意を払いながら気持ちを煮えさせていた。
「ただいま」
「お帰り、蒼」
桐島麗と面倒くさいデートを終えて家に帰った蒼を迎えたのは前髪をピンで留めたAだ。最近、蒼の前では自らピンを付けてくれるようになったことが蒼は嬉しくて堪らない。
好きな人の笑顔は見るだけで癒されるというが、確かにその通りだ。Aの微笑みは蒼の世界を明るくした。
だがしかし、Aを見ると同時に思い出すのが天宮桃華だ。見せつけるようにAと顔を近付け内緒話をし、勝ち誇ったようにニコリと笑ったあの顔を蒼は忘れていない。
「ねぇ、兄さん。今日天宮先輩と何を話していたの?」
出来るだけ何でもないようなふうを装って聞いた蒼に、夕食であるグラタンを並べながらAが答える。
「あ、そのことなんだけど、モモが何かよく分からないことを言ってたんだ」
席に座り、いただきますを言ってから蒼は首を傾げた。
「よく分からないこと?」
Aはグラタンを食べながら頷いた。
「考えてることが大正解だ、って」
ピタリと蒼の手が止まった。考えてることが大正解。最近蒼が考えたことで大正解と言われることと言えば、あれしかない。
兄弟のことをバラした犯人。蒼は天宮桃華に目をつけていた。つまり、バラした犯人は―――――――
「兄さん!天宮先輩に、兄弟になったってこと話した!?」
いきなり声を荒げた蒼に驚きつつAは頷いた。
「えっと、蒼と兄弟になるって紹介された次の日に……」
―――――大正解だ。バラした犯人は天宮桃華で間違いない。
「モモは昔から勘が良くて、僕と蒼が兄弟になるって当てたんだ。モモ、口は固いし、モモになら言っても大丈夫だと思ったんだけど……ごめん。駄目だったよね」
蒼に何か不都合なことがあったのを察したAは目を伏せて謝った。学校で兄と呼ぶなと言ったのはAなのに、自分は話しているじゃないか。嫌な奴だ。
「大丈夫だよ、兄さん。聞きたかっただけだから。何でもないから、兄さんは気にしないで」
眉を下げて笑う蒼にAは余計申し訳ない気持ちが募った。無理に笑っていることぐらいAは気付いている。
何をしたのか、何が大正解なのか、モモに問い詰めるしかない。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時