16歩目 ページ18
予想通り、蒼は必要以上に過保護だった。父に包帯を巻いてもらって楽になったと言ったのに、『兄さん、食器は俺が下げるから』『兄さん、お風呂一緒に入ろうか？』『兄さん髪の毛乾かしてあげる』『明日学校行くの？ペン持っちゃ駄目だからね？』などなど、過保護が重い。
「兄さん、ボタン留めるの手伝うよ」
「う、うん……」
Aは拒否することを諦めた。自分でやると言うと、蒼が悲しそうな声と顔で「嫌？」と聞くから。嫌なわけじゃない。ただ自分で出来ることだし、蒼に迷惑を掛けたくないだけと言うと、白馬に乗った王子様はにこりとするのだ。『僕、兄さんともっと仲良くなりたいから迷惑じゃないよ。ほら、迷惑を掛けるのは親しい人達の特権でしょ』と。イケメンは思考までイケメンらしい。
ちなみに今日は怪我をしてから約１週間。捻挫は大体2〜3週間の休養が必要だ。もう１週間ほど我慢すれば腫れや痛みも軽くなるだろうと父に言われた。
「それじゃ、今日は遅くなるから先に寝ておくんだよ」
「ごめんなさいね、怪我してるのに。どうしても外せなくて」
今日は父と優香里は仕事の関係でそれぞれ重要な用事があるらしい。困ったように眉を下げる二人に蒼は笑った。
「大丈夫。分かってるから。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
Aもそう言うと二人は安心して出ていった。鍵をかけた蒼は振り向き、Aの前髪をピンで留める。始めにやることがそれとは随分とこの瞳がお気に入りらしい。
「うん。やっぱり綺麗」
蒼がいつもとは違う、心からの笑顔を向けた。人はあまりにも美しいものを見ると呆然とする。今のAはまさにそんな状態だ。
「兄さん？」
蒼が首をかしげるとAの時間は動き出したらしい。ばっ、と顔が赤くなる。それからAは何回か言い淀んだ。何か言いたいようだ。
「えっと……その………この目、僕も苦手だったんだ。母さんを思い出すから。でも、蒼に言われてから好きになったよ」
これはAがずっと言いたかった言葉だった。
「綺麗って言ってくれて、嬉しい。ありがとう」
宝石を細めて笑う兄に、蒼はまた胸がきゅっとつままれた。蒼の前で笑ってくれる兄の破壊力は凄まじい。兄は笑うと年齢より幼く見える。多分、この事を知っているのは蒼だけだ。胸に溢れる優越感で、蒼も目を細める。
「どういたしまして」
そう言ってリビングへ歩いていった。
蒼は真っ赤になり口を押さえていることに、Aは気づいていない。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます！ありますよー！蒼くんの方が高いです！そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ！ (2022年3月19日 7時) (
レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます！更新頑張りますね！もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ！そこで完結です！夢主くんと蒼くんはどうなるのか！？麗は成敗出来るのか！？モモの正体は！？乞うご期待ですよ！ (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2018年12月28日 1時
