24歩目 ページ27
ざわざわ、と今日の教室は騒がしかった。皆が口にしている話題は同じこと。
イケメンで特定の人をつくらなかった東雲蒼に、ついに彼女が出来たことだ。彼女の名は、桐島麗。桐島財閥の令嬢。陰では女帝と言われている。あの高飛車で自己中心的な態度が直らないからつけられた名前だ。
友達がおらず話題に疎いAでもさすがにこれだけ噂されていれば耳に入る。
「おはよーA」
「……おはよう」
知らなかった。昨日蒼はAに一度も言っていなかったのに。あの時言った“色々”とは告白だったのだろうか。なら、辛そうにしていたのは何故?
「いや〜すごいね!朝から東雲くんと麗ちゃんの話がそこら中で飛び交ってるよ〜。まさかあんなに早く行動に移すなんてね。私びっくり」
「そうだね」
考えていたせいで聞き流そうとしたが止める。今、モモは、あんなに早くと言っていた。それはつまり、
「告白すること、知ってたんだ?」
「ん?あ。そ、そうそう!麗ちゃん話しててさ!告白するって!」
付き合えたんだね〜とてきとうに言うモモの言葉を聞いて、Aの心がズキリと軋む。何だか心臓を強く握りしめられたようだ。
「どうしたの?」
「あ、いや……何でもない」
そこで辺りに黄色い悲鳴が響いた。どうかしたのかなんて見なくても分かる。
「ありがとう。わざわざ教室まで送ってくれて」
「彼氏だから、当たり前だよ」
桐島麗と、彼氏の蒼だ。普段学校で見せる笑顔とは少し違って見えた。いつもならAに用があってくるのに、今日は違う。その事実が悲しくて、心のどこか深くがもやもやと霞んでいく。
ああ、そうか。自分は隠されていたことが悲しいのか。だから痛いのか。と、Aは納得した。だからと言って何かが変わるわけではないが。
「放課後にまた来るから、一緒に帰ろう」
「ええ。待ってるわ」
仲睦まじいその会話はAにとって刺さる釘だった。麗は財閥令嬢、蒼は王子様だ。他の誰かと付き合うよりはお似合いだろう。
Aは遠くなった気がする王子様を見つめた。向こうも視線に気づいているはず。だが、
蒼は一度もAと目を合わせず教室を後にした。
代わりに目が合った麗は、呆然としているAに、勝ち誇ったように微笑んだ。まるで、『もう私のものだから』とでも言うように。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時