22歩目 ページ25
『話があります。放課後、2階の空き教室で待ってます。』
靴箱を開けたときにあった上質そうな紙。またか……と蒼は誰にも気付かれないように溜め息を吐いた。告白は小さい時から何度もあった。高校生になってから尋常じゃない量だ。蒼は誰とも付き合う気はない。何より、今全身を注ぎたいのは兄に対してだ。
だが蒼とて冷たい人間じゃない。伝えようとしてくれている気持ちに真摯に答えるべく、兄にメールで少し遅くなることを送ってから2階の空き教室へ行った。
「初めまして、東雲蒼くん」
教室にいたのは、先日兄に自分を紹介しろと迫った桐島麗だ。桐島財閥の一人娘。本物のお嬢様であり、性格も高飛車なお嬢様と有名な人物。
「初めまして、桐島先輩」
蒼は笑顔で返した。これからの展開は分かっている。相手は少しもじもじと言い淀んでから告白するのだ。
「貴方、高城Aと仲が良いわよね。あの根暗がそんなに大事?」
……驚いた。これは新しい展開だ。
「はい。A先輩は優しいですから」
これは一体何の質問なのだろうか。こんなことを聞くためにわざわさ呼び出した?分からない。蒼は少し警戒した。
「そう。やっぱり“兄弟になるから”仲良くしときたいのね」
「ッ!?」
蒼は明らかに動揺した。麗が知るはずのない話だ。どこでその情報を手に入れたのか。
「へぇ。その顔。兄弟になるのは本当みたいね」
驚いた、と麗は平坦な口調で言った。本当であるなら、蒼と付き合える。口許が笑みを浮かべた。
「ねぇ、兄弟のことバラされたくないでしょ?」
少し離れていた麗は蒼と息の掛かる距離まで近付いた。
「バラされたくないなら、付き合えと?でも、ただ噂ですよ、先輩」
蒼は必死に微笑みを浮かべた。まだ乗り切れるはずだ、大丈夫。
麗は笑顔を絶やさない。気付いたからだ。桃華が言ったヒントの意味を。
「噂でもあの根暗を見に来る人は増えるでしょうね。目立つが嫌いな根暗にはキツいんじゃない?東雲蒼の噂で目立つのよ」
嫌われるわよ、と麗は暗に言う。ヒントの使い方は合っていたらしい。蒼の顔が歪む。
「貴方が私と付き合ったら、バラさないでいてあげる。簡単でしょう?」
蒼はAとの幸せな関係を崩したくなかった。Aに嫌われたくない。なら、すべきことは1つ。
「………俺と、付き合ってくれますか?」
絞り出すような声で言うと、麗はにっこりと笑った。いっそ狂気を感じるほど満面の笑みだ。
「ええ。喜んで」
麗は言うことを聞くようになった“肩書き”を細めた目で見下した。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時