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思わずその場で固まった。石というより岩の状態のAと違い、学校で王子様と呼ばれている蒼は首をかしげてけこちらを見つめる。
「これから弟になる東雲くんだ。もしかして知り合いかな?」
Aと蒼を交互に見た父はそう聞く。
知り合い?いや、断じて違うと叫びたい。こんなのと知り合いになったらAは登校拒否間違いなしだ。父だって自分の息子が目立つことを拒んでいるシャイ属性であることは分かっているだろうに。
答えないでいるAの代わりに王子様は笑顔で返す。イケメンは笑うだけで世界が輝くのか。ああ玄関が眩しい。
「同じ高校の先輩で、委員会が一緒なんです」
「なるほど。よかったなA」
何がよかったの!?しかも僕は一緒の委員会になりたくなかったけど!!何でわざわざ騒ぐのが苦手そうなメンバーが集まってる図書委員に来ちゃったかなぁ!?おかげで憩いの場だった図書室が連日女子の悲鳴で騒がしいよ!
なんて怒りは心のなかに留めておく。こんなこと言えないし言わない。言ったところで世界が輝く笑顔で「ごめんね?」と言われるだけだ。Aが王子様にそう文句を言ったことは瞬く間に学校に広まり、静かに生きていたAは裏表の激しい女子のターゲットにされる。自分の命を減らすようなことはしない。
「ああ済まない。私としたことが玄関で話してしまうとは。蒼君、どうぞ上がってくれ。A、お茶を」
とにかく王子様と距離を取りたいAは短く返事をしてキッチンへ向かう。気を遣わなくていいですよ、という好青年アピールは今は無視だ。
「そういえば優香里(ユカリ)さんは?」
優香里さん?きっと父が結婚を考えてる人だろう。つまりは王子様のお母さんか。お妃様かな。
「母さんなら少し遅れて来るそうです。緊急の書類を届けてから来ます、本当にごめんなさいと謝ってました」
「ははは、優香里さんは本当に可愛い人だ」
キッチンから見えた父の笑顔は幸せそうで。例えどんなに王子様と兄弟になるのが嫌でも、父のためなら我慢する。王子様が来る前に話した気持ちは変わらない。
「どうぞ、粗茶ですが」
キッチンから出たAは来客用のコップに淹れた麦茶を出す。
「ありがとうございます」
うっ……!キラキラなスマイルを直視してしまった。眩しい。
こんな王子様が、これから僕の弟になる。父には幸せになってもらいたいけど、もしこの後来るお妃様が嫌な奴だったら、父と話し合いをしよう。そう考えるAだった。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時