【リク作品】なくしたものを見つけに 5 ページ18
Aside
主「ねぇ、ルイ」
二人が出たばかりの扉を見つめながら、僕は小さな声でルイを呼んだ。
ル「どうした?」
主「思い出したんだ。ケーキのろうそくの火を消すとき、願ったこと」
こんなふうに、毎日お母さんとお父さんと過ごせますように。
ある意味、当たり前のことだ。だから僕は、当たり前で幸せなあの瞬間に願った。続きますように、と。
主「そうお願いしたのにすぐ仕事に行っちゃう二人のことが嫌で、悲しくて、だからわがまま言ったんだ。本当は分かってたのに。すごい大変な仕事なのも、時間を見つけたら帰ってきてくれてたことも、全部。………馬鹿だな、僕」
これ以上耐えきれなくて、声をあげて泣いた。ルイは正面から僕を抱き締めて頭を撫でる。もう片方は背中をトントンしていた。
ル「俺はずっと、傍にいるよ。これからも、何があっても、ずっと」
ぎゅっ、と抱き締める力を強くしたルイ。少しひんやりとした体温が僕を落ち着けてくれる。
ひとしきり泣いて顔をあげると、部屋がぐにゃりと歪み始めた。ルイと慌てて辺りを見回す。瞬きをして次に目を開けると、リビングが小さな僕が寝ている寝室に変化した。
ベッドには泣きつかれて寝ている小さな僕。少し眉間に皺が寄っている。
ル「誕生日の続きか?」
主「多分、出てったその後だと思うけど………」
そこへ、キィと扉が開いた。入ってきたのは両親だ。
美『すぐ終わらせてすぐ帰ろうと思ってたのに、こんな時間になっちゃった。Aごめんね』
祐『いつも我慢ばかりで苦しいよな。何もしてやれなくて、本当に済まない』
電話にかかってきた仕事を終えた後の話みたいだ。
美『嫌いじゃないのよ。大好きなの。好きで好きでたまらないの』
祐『だから、Aが平和に暮らしていけるように仕事をしていた。仕方ないと割りきっていたんだ。でもそんなの、Aには分からないよな』
二人はベッドに腰かけて僕の髪を撫でて布団を掛ける。
美『大好きよ。いつも心から、あなたの幸せを願っているから』
祐『Aが成人するまでに、全てを終わらせる。そしたらまた、一緒にケーキを食べよう』
僕の前髪をあげた母さんは、そっと額に口付けた。父さんも同じように口付け、おやすみと呟いて部屋を出る。
その瞬間、また部屋が歪み始めた。
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埋夜冬(プロフ) - まどかさん» ありがとう!ワクワクしてくれて嬉しいよ!今書いてるBLも見てくれたら嬉しいな! (2019年1月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
まどか - 完結、おめでとう!最後までワクワクしたよ!! (2019年1月9日 19時) (レス) id: 130990d81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年11月6日 0時