死を意味する ページ33
コツン。
靴音が響いてそちらを向く。ノヴァーレが余裕のある微笑みを浮かべてこちらへ歩いてきていた。
「さて、あとは君だけだよ、切り札くん。君とは少し話をしたかったんだ」
Aは動かないファルをギュッと抱き寄せてノヴァーレを睨んだ。それがノヴァーレの言葉への返答。
目を細めたノヴァーレはまたコツンと歩みを進めた。
「まあいいや。死なない程度に痛めつければ話をしたくなるよね」
怖い。すごくすごく怖い。ノヴァーレとの距離が縮まる度に震える。でも逃げられない。逃げたらファルやエル達は確実に殺される。今ここで、僕が何かしないといけない。でもスキルは攻撃系じゃない。どうしたらいい?ファルもエル達も助けたいのに、手立てがない。
途端、ボンッと音がした。ノヴァーレが進む先に火の攻撃の跡があった。2つだ。
「まだ・・・・・・終わって、ないよ」
「Aにッ、近づくな・・・・・・!」
エルとファルが魔法を放ったようだった。2人とも荒い息を繰り返しているのにAを守るためにノヴァーレに対峙している。
ノヴァーレは舌打ちをするとエルを見た。
「全く、これだから人間は面倒だ」
「ッ!エル逃げて!!」
瞬間、ノヴァーレが消えた。ハッとしてエルの方を見ると、エルの目の前にノヴァーレがいた。
「黙っててよ」
くぐもった破裂音。ひゅっ、とAの喉が鳴る。
「ご、ふ・・・・・・ッ」
咳き込むエル。口を覆った手からは赤黒い "何か" が漏れていた。
今まで血を見てきたけど、エルから漏れるそれを血と認識したくなかった。
内臓が爆発させられたのだと分かるのにそう時間はかからなかったが、それはつまりエルの死を意味するのではないかと。
「お前もだファグゲイル。誰に口を聞いている」
冷徹な目をしたノヴァーレはファルを捉え、パチンと指を鳴らした。
またもや周辺で爆発。風圧で飛ばされ、ファルと離れてしまった。
「ファル!!!」
ファルはノヴァーレに首を絞められ苦しそうに喘いでいる。
「やめて!ファルを離してッ!!!」
[集中]のスキルを使う前にまたくぐもった破裂音が響いた。ファルの口から血が垂れるのが、スローモーションのように見えた。
「ははっ」
魔王は笑った。笑ってファルを放り投げた。ファルの口から垂れる血は止まらない。Aはファルを抱きしめて、血が気道を塞がないように横向けにした。
楽しそうなノヴァーレを前に拳を強く握りしめた。
――――――――――お前だけは絶対に許さない
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時