血の海 ページ32
珍しい。ラナストから頼みがあるなんて。
「頼みって?」
「地面に雷の魔法を放つ。あの魔王のところまで届くように力を使ってくんねぇか」
ラナストが見たのは地面に立ち魔法をかわすノヴァーレの姿だ。足が地面に付いていれば、ラナストの雷魔法もノヴァーレまで届く。
「分かった。魔法を相手に集中させたことはないから、絶対できるとは言えないけど・・・・・・」
「それでもいい。隙を作れればいいからな。そしたらあとはエル王子がトドメを刺してくださる」
ラナストの真剣な瞳を見てAも真剣な瞳で頷いた。意識を集中させやすくするために地面に手をつける。見つめるのはノヴァーレの足。
「行くぞ!」
「うん!」
―ラナストの放った雷魔法はノヴァーレに集中して!
瞬間、バチィッと激しい音が鳴ってノヴァーレのいた地面から雷魔法が放たれた。
「あ、が・・・・・・ッ!!?」
それは見事ノヴァーレに集中し、ノヴァーレは上を向いて痙攣し始めた。
「王子!今です!」
「ありがとうラナスト!いくよファル!」
「命令するな!」
エルは手に、ファル口に、それぞれ特大の魔力を集める。火力を凝縮した火の玉は色を変え、紅蓮に染まった。
「これで」
「終わりだね!」
言葉と同時に魔法を放ちノヴァーレへと一直線に進む。ノヴァーレはまだ上を向き痙攣したままだ。
大きな爆発音がして煙があがる。
やった!勝った!!!
「――――――――ハハッ」
心底愉悦といった風な笑い声。
そこには服は焼けているが体自体は無傷なノヴァーレが立っていた。
「なっ!!?確かに魔法は当たったはず!」
これにはファルもエルも固まってしまった。
「いいや、当たってない。寸前で爆発させたのさ、こんなふうに、なっ!!」
ノヴァーレは手を前に出し、火の玉を出す。野球のボールぐらいの大きさの火の玉は震えだし、そして。
「ッ、皆逃げ――――――――――!!!」
眩しく光り爆発した。
Aはきゅっと目を閉じた。体に感じる浮遊感。浮いてる?なんて思う間もなくものすごい風圧で飛ばされた。地面に全身を強く打ちながら着地し倒れる。痛い。痛い!!
「み、んな・・・・・・だいじょ、ヒッ!」
ゆっくりと起き上がり周りを見て、Aは短い悲鳴をあげた。
傷口が開いたのか、怪我をしているメンバーの周りには血の海が出来ていた。
「ファル!!!」
慌てて見回すとファルはいた。ドラゴンの姿から人に戻り、ピクリとも動かずに浅い呼吸を繰り返していた。
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時