ファルのことを何も知らなかった ページ25
「A!」
エル達がAの方へ戻ってきた。オリオンは先程飛ばされたせいでところどころ汚れている。
「Aは、知っていた?」
無論、ファルがファグゲイルという魔族であることを、だろう。知るわけがない。そもそもAはこの世界のことを何も知らないのだから。自分を守ってくれていた龍が実は人間たちが憎んでいる魔族で、しかも上位種族だなんて予想もしない。
見えないくらい速い戦いを呆然と眺めて、Aは静かに口を開いた。
「・・・・・・僕は、ファルのことを何も知らなかった・・・・・・。いつも守ってもらってたのに・・・・・・」
首の契約は血を吸われた時に交わされたものだろう。ファルは出会って直ぐにAに自身の生死の権限を渡したことになる。何故?分からない。
だって自分は、ファルのことを知ろうとしなかった。ファルが教えてくれなくても別にいいと。それは信頼とも呼べる。だが自身がしていたのは信頼ではなく、『聞いたって分からないからいいや』という諦めだ。
その事実が襲ってきて、拳を握りしめた。何だそれ。ファルに守ってもらう価値なんて自分にないじゃないか。
力の差は圧倒的だ。相手はファルより上の立場であり魔王。だというのにファルはAを守るために今も戦っている。
どんな戦闘になっているのか分からないから、スキルを使うことも出来ない。もどかしい。やっぱり自分は何も出来ないんだ。
「ファル・・・・・・」
オリオンは拳を握ってポロポロと泣くAを見て、思考を巡らす。相手はどちらも憎き魔族。だが家族を亡くしやっと会えた存在がファルであるなら、この展開はAの望んだものではない。
「ファグゲイルはガードしているが、やはり魔王が一方的に攻撃している。防ぐので精一杯みたいだ」
パッとAは顔を上げ、オリオンを見た。
「ファグゲイルのためじゃない。Aが俺たちの仲間だからだ。魔族は嫌いだ。殺したいくらい嫌いだけど、Aにはこれ以上悲しい思いをして欲しくない。・・・・・・家族が居ない苦しみは、知っているから」
オリオンの父は魔王戦に敗れ帰って死んだ。家族が死ぬのは、会えなくなるのは、辛く苦しいことだと知っている。だからどれだけ憎くとも、少しくらいは手を貸そう。
「ありがとう、オリオン」
オリオンは仏頂面でAの頭をひと撫でした。
「A、
ヴィーシャの言葉で思い出す。
自分のスキルは、集めること!ファルを自分のところに戻せるかも!
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埋夜冬(プロフ) - 千々さん» 最後までお読み下さりありがとうございます!!!もう本当にありがとうございます!超絶励みになってました!(語彙力) 主人公くんに万が一飽きると魔王様が攫う気満々ですが、その前にエル様がガードしにきます。玩具を取られたくないからね!!ガードが多いね主人公! (2021年3月13日 11時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 完結おめでとうございます! とても面白かったです! やっぱりファルの主人公に対する執着がいいなあと思いました。そしてファルが主人公に飽きる日は来ないらしいですが、もしそんなことになったら私が主人公を守りにいきます(( 本当にお疲れさまでした! (2021年3月13日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!作者は更新時間まばらですが、これからも精一杯頑張らせていただきます!今後もよろしくお願いします! (2020年8月26日 12時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても楽しくお話を読ませていただいています! 楽しいお話の中にちりばめられた謎がとても気になって……! これからも読ませていただきます! 続きを楽しみにしていますね! (2020年8月26日 8時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» ありがとうございます!予定では続編でちゃんと終われるはず!頑張りますのでお楽しみに!コメントありがとうございます! (2020年8月26日 5時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年8月25日 23時