特殊スキル［集中］のみで目指す魔王城【オリジナル】

それで問題ないね、とエルが笑った ページ17

煙が晴れると同時にピシャァッと雷鳴のようなものが響いた。ゴーレムの首を横に一閃したラナストの短剣から光が見える。電気、つまりは雷を発生させたのだと分かった。

斬られた痛みに唸るゴーレムに、さらに攻撃が続く。クルシュの矢が目に突き刺さり、エルの火炎魔法が全身を攻撃した。鎖のせいで動けずガードが遅れたようだ。

｢グゥゥゥゥッ！！！！貴様ラゴトキニ･･･！！！｣

｢ッ！鎖が解ける！！離れろ！｣

ヴィーシャが叫ぶ。ゴーレムも雄叫びを上げ、鎖をブチブチと引き裂いた。ゴーレムが呪術魔法を消したのだ。動けるようになったゴーレムは金棒を振り回し、竜巻のような風を起こす。エルたちは一旦距離を取るために後ろへ下がった。

｢･･････済まない、取り乱した。それでエル、どうする？｣

オリオンがゴーレムを見据える。攻撃を喰らったことによりさらに気性が荒くなったゴーレム。鎖もすぐ解かれてしまうだろう。煙幕も風で意味を成さない。

｢魔法を打ち続けるしかないね。こちらとしても魔王戦のために取っておきたいところだけど･･････｣

｢魔力消費はある程度抑えられます。私が魔法を使いましょう｣

言ったのはハルだ。曰く、ハルの聖魔法を使えば少量の魔力でもかなりの威力を出せるという。ただし使うハルの魔力は消費されるので決めるのはエルたちに任せる、とのことだ。

｢なるほど･･････。頼めるかな？ハルがあと1回その魔法を使える程度まで魔力を消費して欲しい｣

｢分かりました｣

エルは微笑みを深めてハルを見た後、ずっとAを守っているファルへ視線を向ける。

｢ファル｣

ファルはこの後言われることが分かっている。眼光を鋭くしてエルを睨んだ。

｢お断りだ。俺はAから離れない。何だ、攻撃はAの力で避ければいいと思っているのか？使いすぎると暴発して死を招くかもしれない力を使えと？｣

｢じゃあクルシュをつける｣

それで問題ないね、とエルが笑った。何も守っているのはファルじゃなくていい。ファルはこのメンバーの中でもかなり強力な魔法が使える者だ。対ゴーレム戦に必要な存在なのは明白な事実だった。

｢何かあったらAを優先するからな｣

｢構わないよ｣

本気は出さない。第一、本気になってしまうとこのゴーレム達に俺の正体が気付かれてしまうから。
この戦いで誰かが重症を負う事を願いながら、ファルはどれくらい魔力を抑えようかと考えた。

どちらがいいか天秤にかけて、→←隊長！オレが斬り込むから目ぇ狙ってくれ！

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