第7話 ページ9
だがやはり何かしないと、日常生活を忘れてしまいそうだ。
そう食い下がると困ったような顔でサクヤは笑う。
｢じゃあ買い物に付いてきてくれる？冷蔵庫が空っぽになっちゃったから、いろいろ買っておきたいんだ。重たくなるから荷物を持つのを手伝ってくれる人がいたらとても助かるんだけど･･･ダメかな？｣
目を真っ直ぐに見つめ、コテンと首を傾げたサクヤ。何だろう、この『ダメなわけないよ！よしよし！』としたくなる感情は。
もちろんその程度ならできる。｢いいよ｣と頷いて、家を出る支度をした。
サクヤはウエストポーチをつける。気付かなかったが、ゴミ捨て場で出会った時から付けていたらしい。中は携帯と財布だけだよ、と本人が言っていた。本当かどうかは知らないが、別に知る気もない。
サクヤの財布にはたくさんお金が入っている。もともと何をしていて稼いだお金なのかは、ちょっと気になるところではある。そのお金で冷蔵庫の食材を少しずつ足しているのを知っている。今働いている様子がないから、お金を使わせていることに何だか罪悪感が湧いた。
｢何買うの？｣
スーパーまでの道を歩きながら聞く。さっきから向かいを歩く人皆がサクヤを見てきゃあきゃあ言っていて、その気持ちに大いに頷いた。
分かるよ。こんなオーロラみたいに綺麗な人が歩いていたらきゃあきゃあしたくもなるよね。
サクヤは途中からマスクをつけていた。何だか芸能人のオフについて行くマネージャーの気分だ。
｢んー、実はあんまり決まってないんだ。好きな料理とかない？Aに好きな料理食べさせたい｣
やめてくれ、イケメンの期待で煌めく瞳とか浄化してしまう。
甘い言葉も、サクヤは顔がいいので似合ってしまう。きっとこんなセリフを言って数多の女性たちを落としてきたのだろう、無意識に。
｢好きな料理･･･｣
何があるだろうか。ちゃんと好きだと言える料理。
｢料理って言うか･･･和食が好きだな｣
ずっと祖父母に育てられてきたから、洋食より和食が好きだ。煮物とか、家庭的なもの。
｢そう。じゃあ今日の夕食は料亭をイメージして作ろうかな｣
また豪華なものができそうな予感だ。楽しみでもあるが、一体どれだけお金を使う気なのか。残高大丈夫か？やはり自分が出すべきなのでは･･･。
｢いいの。俺は家事でしかお礼を返せないから｣
さぁて。何を買おうかな。
スーパーに着いたサクヤは話を終わらせるようにそう呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける！もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (
レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう！(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし！2人で木になりましょう！！！ (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します！！ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう！？私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します！！！ (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：埋夜冬
| 作成日時：2020年6月28日 22時
