第5話 ページ7
「まず何から聞きたい?できるだけ答えるよ」
全部答える、とは言わない。大きな海みたいに包み込む笑顔を浮かべてイケメンはこちらを見た。
「えっと・・・じゃあまずは名前から教えて欲しいです」
「そうか、まだ名前も言ってなかったね。じゃあ自己紹介しよう」
イケメンが姿勢を正したのでAも正す。ふわふわな茶色い髪が揺れた。
「俺の名前はサクヤ。27歳です。よろしく」
「橘花Aです。20歳の社会人です。よろしくお願いします」
このイケメン、サクヤっていうのか。しかも27歳!顔立ちが若いのでもっと歳が近いと思っていた。
「他にはある?」
「えっと・・・どうしてゴミ捨て場にいたの?」
あぁ、それか。とサクヤは考える。少しの沈黙。
「まぁ強いて言うなら・・・ケンカかな」
ケンカ。彼女とではなさそうだから、家族とだろうか。
「帰る家があるなら、ちゃんと帰らないとダメだと思うよ」
Aは知っている。誰もいない家に帰る虚しさも、そばにいてくれる人のあたたかさも。失ってから気付くのだ。
だから、帰る場所があるのなら帰った方がいい。
「帰る場所・・・そうだね。あるといいね」
サクヤは笑った。とても綺麗な笑顔だ。でも綺麗だと思うのに、なんだか違和感を感じた。
「これからどうするつもりなの?」
聞くまでもなかった。料理を作ってくれて、部屋にものが増えているのだから。
「しばらくここにいたいな〜って思ってるんだけど、ダメ?」
困ったように笑う男は、自分の顔の良さを分かっているのだろうか?あんな綺麗な顔で、『助けて欲しいけど言えない』みたいな顔を浮かべられたら助けるしかないじゃないか。
それに、Aにとってはメリットしかない。家は綺麗になっているし、ご飯は用意されているし、あたたかく迎えてくれる誰かがいる。
「で、でもちゃんと家には大丈夫だよってこと伝えるんだよ!」
「それはここにいていいってことだね。ありがとうA。これからよろしく」
白くてすらっと長い手がこちらに伸ばされる。握手か。するのか、この綺麗な手と。
「よ、よろしくお願いします・・・!」
恐る恐る伸ばしていたらサクヤから手を握られた。思わず「ひぇ」と声が出てしまい、サクヤにクスクスと笑われた。
その笑顔も眩しい。
ハンバーグを食べながらふと考える。
あれ?よくよく考えたら名前と年齢以外分かっていないのでは?
・・・まあいいか。
人には言いたくないことがあることも、Aはよく知っている。
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*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける!もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう!(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし!2人で木になりましょう!!! (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します!!ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう!?私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します!!! (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年6月28日 22時