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第23話 ページ25

金曜日の夜。やはり仕事は定時で上がれなかったけれども、何とかやりきって帰った。
家は暗い。もう何度目かも分からない、彼がいない夜。最近は特に多い。

チンしたサクヤの料理を食べて、お風呂に入って、布団に潜る。これでいい。これが、一人が日常だったのだから。
痛い心に気付かないふりをして、目を閉じた。





そっと、壊れ物を触れるように髪を撫でる手。寝ていた意識が浮上して身じろぐと、「ごめん、起こした?」と優しい声が降ってきた。

「・・・おかえり」

「うん、ただいま」

髪を撫でる手には見覚えのないリストバンドがついていた。

「商店街の福引きで当たったんだよ」

そう言って彼から差し出されたものは彼の瞳と同じ毛をしたぬいぐるみだった。ぬいぐるみには、同じリストバンドが縫い付けてある。

「・・・何で俺に?サクヤが当てたのに」

眠い目を擦りながら聞くと、彼は明後日の方向を見てからもう一度俺の方を向く。

「君に、プレゼントって程じゃないけれど持っていてほしいんだ。駄目・・・かな?」

仕方ない、仕方ないだろう。あんな捨てられた仔犬のような目を向けられたら女性はもちろん男だって断れる人間などいない。そもそも顔がいい奴の頼みを断れるわけが無い。
彼は俺より身長も体格も大きいくせに何処か少年の様な雰囲気を持ち合わせている。そんなところも素敵だと思う自分がいることが嫌だ。

「名前、とかつけた方が良いのかな?」

いやいい歳こいて何言ってんだ俺は。
ギシッと響く寝具の音が余計に虚しくさせる。サクヤはまた出ていってしまって、自分以外誰も居ない部屋に視線が交じる。チクタクと使わなくなった目覚ましの音が自分の心音と重なり何とも言えないむず痒さが生まれた。

そういえば、彼が家に住み始めてから俺の家はどんどん彼に侵食されている気がする。ちゃんと干された布団の香り、柔らかい寝巻き、そして愛くるしい瞳で見つめるぬいぐるみ。

「散々だよ、俺の人生」

悪態だ。こうでも言わなければさらに奥の奥まで彼に染まってしまいそうだから、悪態なのだ。チクタク…心音がやけに早くて変にどぎまぎする。

「…寝るか」

呼吸を整えぬいぐるみを腕に抱え横になる。布団と、ぬいぐるみから微かに香る何かの匂いに包まれながらゆっくり意識を離す。

どこかへ行って。
いなくならないで、ここにいて。
また消えるのは見たくない。
サクヤがいないと寂しい。

チクタクチク、部屋からは規則正しい呼吸音だけが響いている。

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*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける!もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう!(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし!2人で木になりましょう!!! (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します!!ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう!?私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します!!! (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年6月28日 22時

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