第22話 ページ24
紅葉を見て帰った日から1週間ほど経った。あれからAはサクヤの顔をまともに見ることが出来ない。顔どころか声を聞くことも、姿を見るのも、したくなくなった。
―――――だって、見たら、聞いたら、ますますサクヤの存在が大きくなってしまうから。
距離を取っているのを分かっているはずなのに、サクヤの言動はいつもと変わらない。おはようからおやすみまで言ってくれる。返事がぎこちなくても、聞こえているか分からないくらい小さな声で言っても、いつもと変わらない。
だが変わったことが2つある。Aが好きと言ったバンド、inefficiencyの曲を流すようになったこと。それから、用事があると外へ出るようになったことだ。Aにとってそれは嬉しい変化だった。
大好きなバンドの曲。洗い物をする時やお風呂に浸かる時に口ずさむ。実は初めて曲を流した時のサクヤの反応が心配で、流すようになったことも大丈夫なのだろうかと不安だった。だがサクヤも曲を聴くときの目が優しくて、何となく平気なのだと分かった。
外へ出るようになったことは、1番の変化だ。スーパーなどへ行くのに｢用事がある｣と出ていかない。ならば用事とは、喧嘩している家族と話しているのかもしれないから。
夜はAが帰宅するよりも遅く帰ってきたりすることがある。正直顔を合わせられない今は、その状況に感謝している。このまま仲直りして、実家に戻ってくれればいい。サクヤはここにいてはダメだから。
ジクジクと痛む心を感じないふりをして、Aはいつ言われてもいいように覚悟を決めた。
痛む心を無意識に押さえていたその手にドッグタグが触れる。会社に付けていてもバレていない、サクヤとAの帰る証。
ドッグタグの表にはAの名前と苗字のイニシャルが筆記体で書かれている。裏には『S.H』の筆記体。これは言わずもがな、サクヤの本物の苗字と名前だろう。だからあの時、背を向けさせたんだ。自分の本当の名前を知られないように。
信用、されてないもんなぁ･･････。
サクヤの名前と年齢以外、Aは何も知らない。それでも存在は大きくなっていくばかり。実際、どうしようもないヒモだったらこんな感情にはなっていない。サクヤだから、なってしまった。
ああ。なんて不毛で叶わない道。どっちみち辛くなるなら先に離れた方が良さそうだ。
だってそうでしょう？
好きな人には、自分が原因で死んでほしくないでしょう？
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*-七海-*@めぐ民 - う〜ん…泣ける！もう、今我情緒不安定だからww涙めっちゃ出るんやけどww (2020年8月25日 21時) (
レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» なりましょう！(2人は我らが見てるって事を知らないのだな…) (2020年8月11日 23時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» よし！2人で木になりましょう！！！ (2020年8月9日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
*-七海-*@めぐ民 - 埋夜冬さん» wwwじゃあ、我はその木の枝役に立候補します！！ww (2020年8月9日 22時) (レス) id: cc0b3d41a2 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - *-七海-*@めぐ民さん» でしょう！？私はめちゃくちゃイケメンな相手にやってるのを見る木の葉役に立候補します！！！ (2020年8月9日 13時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2020年6月28日 22時
