だからお前たちは嫌いなんだ ページ34
「困ってるから、魔王を討伐しに行くんですね!」
そういうことですね!と納得しようとすると、
「いいや?魔王も魔族もモンスターも、この国で実害を出したことがないよ。ただ、悪を潰すだけ。魔王という存在は、いるだけで恐怖の対象だ。私や父上は、国の頂点に立つ者として民から少しでも恐怖を取り除きたいんだ」
困っているわけではなく、諸悪の根源であり恐怖の対象である魔王を潰す。なるほど、と一瞬納得しそうになったがゾクッとしたので思考を止めた。寒気はファルからだ。
「実害がないのに何故屠ろうとする?お前たちは人を『そこにいたから』という理由で殺すのか!?」
ファルの言う通り。実害を出したことが無いというのなら、何故恐怖の対象となっているのだろうか。
大きな壁の向こうにはモンスターたちがいる。のモンスターたちから国民を守るための壁。攻められたこともなく平和なのだと言うのなら、何故"魔王"が怖いのか。
「――――――随分と魔王の肩を持つね」
その一言で、ファルが小さく息を飲む音が聞こえた。エルはゆっくりとファルに近付く。いつも笑顔で細まっている目が開かれ、真顔になった。
「ファル、君は大切なご主人様を裏切るようなことはしないでしょう?」
チラリとエルの翡翠の瞳がAを見た。視線がファルに戻る。
「・・・・・・だから、
心底憎いと言った表情でエルを睨んだファルをものともせず、エルはいつもの笑顔に戻った。
「それは良かった」
今の言葉にどんな意味が隠されているのか、Aには分からない。だがきっと、ファルが傷付くような事なのだろう。でなければ、ファルがこんな怒りと悲しみを混ぜた顔をしない。
「ファル・・・?」
そっと服を握るとファルの体から力が抜けた。大丈夫だと言うように微笑んだファルは首筋を少し撫でる。ファルがまだトカゲだったときに治してもらった首の傷があったところだ。
くすぐったいけどファルの表情が緩んだので我慢しよう。
「上等だ。魔王討伐、行ってやろう」
「え!?」
待ってまだ僕考えてなかったのに!!いやまあぶっちゃけファルがいれば他の強いモンスターとか倒せちゃうんじゃないかと思うし、そもそも魔王は倒すべき存在なのかファルの言葉を聞いて考えてなかったいたところなのに!!
「本当!?嬉しいよ、ありがとう」
結局、陛下と王子の前で言ったことを撤回できるわけもなく。
上機嫌のエルたち率いる勇者軍の仲間入りを果たしてしまった。
無理怖い帰りたいよファルぅぅ!!→←王族騎士団or魔王討伐!?
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埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» わぁ!ありがとうございます!転生ものにハマってからずっと書きたかったものなのでそんなに褒めてもらえて嬉しい限りです!これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年8月2日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。初期の頃から楽しく読ませてもらってます。オリジナル作品でこんなに面白くて設定がしっかりしているなんて、尊敬します…。文章力も羨ましい限り(泣) 応援しております、頑張ってください!!楽しみに待ってますっ (2020年8月2日 21時) (レス) id: 4a3a7aaa8a (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!サブタイトル忘れてることに気付いて慌ててつけました(笑)まだまだ続きますので、これからも応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました (2020年6月28日 7時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - やっぱこの作品好きだなぁ。初期の方から応援させていただいているんですが、サブタイトルだったりお話の展開をものすごく楽しみにしています! (2020年6月28日 7時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年4月15日 6時