見破るとはさすが王国騎士団小隊長 ページ19
ファルは突進してくるグオードの前にゆったりとした足で近付く。
「おい」
地に響くほどの低い声にAもクルシュも、目の前に迫っていたグオードすらも動きが止まる。
肌を刺す空気。これには覚えがある。川でウサギモンスターと会った時、トカゲだったファルから出た殺気だ。
ファルは今、怒っている。
「誰のものに手を出そうとしている?」
グオードは言い訳をするかのように唸ると数歩下がった。ファルは右手に火を出してそれを大きくしていった。
「去れ。次俺にその顔を見せたら骨まで残さないよう燃やし尽くしてやる」
グオードは静かに森の奥の方へ歩いていく。またファルは殺気だけでモンスターをやっつけたのだ。
「A!怪我はないな?どこも痛くないな?」
グオードが去るとファルはすぐにAを抱きしめた。
「わっ!大丈夫だよ。ありがとうファル。かっこよかった」
言うと、ファルは照れたようにはにかんだ。
「助けるのは当たり前だと言っただろ。無事で良かった」
ファルがAの髪を撫でているところにクルシュが来た。癒しの時間を邪魔されファルはクルシュを睨むが、Aがいる手前物理攻撃をしてこない。
「クルシュさん!大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。それよりもお礼を。あの時助けてもらえなかったら私はもっと重傷を負っていただろう。感謝する。だがどうやってグオードの注意を逸らした?それに――――」
クルシュはファルを見る。
「君は、人ではないな?何者だ」
Aもファルも驚いた。ファルの姿は人だ。だがAと初めて会った時はトカゲ。爬虫類から人になった。Aは爬虫類状態から知っているがクルシュは知らない。それなのによく見破れたものだ。
ファルの瞳が、すぅっと細まった。
「何だっていいだろ。俺のこともAのことも、お前が知る必要は無い。行くぞA、置いてきた荷物を取りに行こう」
「あ、うん!」
ファルはそんなにトカゲ状態を知られたくないのだろうか。だが確かに引っかかるところはある。殺気だけで森の主すら怯ませられるファルが、どうして初めて会った時はあんなにボロボロだったのか。
魔力があれば人の姿になれるファルが、ボロボロになってトカゲぐらい小さくならないといけないなんて何があったのだろう。
・・・・・・いつか、教えてくれるかな?
避難させていた馬車を呼び戻し荷物を詰めて乗り込む。兵士たちもずいぶん疲弊してしまっている中、王都へ向けて出発させた。
21人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - ふわふわありすさん» わぁ!ありがとうございます!転生ものにハマってからずっと書きたかったものなのでそんなに褒めてもらえて嬉しい限りです!これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年8月2日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。初期の頃から楽しく読ませてもらってます。オリジナル作品でこんなに面白くて設定がしっかりしているなんて、尊敬します…。文章力も羨ましい限り(泣) 応援しております、頑張ってください!!楽しみに待ってますっ (2020年8月2日 21時) (レス) id: 4a3a7aaa8a (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます!!サブタイトル忘れてることに気付いて慌ててつけました(笑)まだまだ続きますので、これからも応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました (2020年6月28日 7時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - やっぱこの作品好きだなぁ。初期の方から応援させていただいているんですが、サブタイトルだったりお話の展開をものすごく楽しみにしています! (2020年6月28日 7時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2020年4月15日 6時