4話[♪] ページ8
屋上は一応立ち入り禁止とされている場所だ。だがそんなの建前で、鍵も空いてるし先生に入っているところを見られても何も言われない。まあそれは、入っているのが琉司だからかもしれないが。
屋上への扉を開ける。空は晴れていて、いい天気だ。琉司は桜の方を向く。目を合わせないように下を向いている彼は、実は声まで似せることの出来る天才コスプレイヤーだと知る者は数少ないだろう。
「てめぇか、あの時のかぐや様は?」
「・・・そう、ですけど」
認めた!
すごい、こんなに普通の見た目をしている奴があのかぐや様を完璧に再現しているだなんて。
「声とか、真似できんのか」
「・・・まぁ」
見たい!と目で訴えると短くため息を吐いた桜は、かぐや様の有名なセリフを言った。
「『お可愛いこと』」
うぉぉぉ!!すげー!姿はそのままなのにかぐや様がいるみてーだ!!
琉司の心臓は興奮でドキドキと高鳴っている。落ち着け神樹琉司。あの時のかぐや様であるなら、写真のお願いをしなければならない。
ここが一番緊張するところだ。
「おい」
「は、はい・・・」
「写真撮らせてくれませんかゴラァァ!!」
言った瞬間、琉司の顔がサーッと青くなった。
仕方ないじゃないか。生まれてこの方お願いなどしたことがないのだから。コンビニ行って広告見て「これ美味そうだな」って言うだけで誰かが買って渡してくるのだから。お願いとか先輩のヤンキーが言っていた方法しか知らないのだ。
「・・・は?」
桜は目をパチクリと瞬かせる。さすがに驚いているようだ。
「間違えた、動画だ」
「いやそうじゃなくて」
ついつい桜がツッコんでしまった。
良かった。返事はもらえていないが、とりあえず断固拒否ではなさそうだ。琉司はしっかり話そうと咳払いをする。
「かぐや様をもう1回見てぇんだよ。だから動画撮らせろって言ってんだ」
すると彼はあの時のようにキッと睨む。
「・・・かぐや様コスの動画を売り飛ばすつもりですか、そのテの人達に」
「ンなことしねぇわボケ」
コイツには俺がどんな風に見えてんだ。大体そういう輩には関わったことがないぞ。ヤクザの息子ならともかく、こちらは一般のヤンキーなのだ。
「自分用だ、自分用。てめぇのかぐや様、完成度高かっただろーが。だから動画撮らせろ。んで、俺だけが見る」
公開しないぞ、という気持ちを込めて言ったのだがイマイチ伝わっていなさそうだ。
桜は余計眉間の皺を深めるだけだった。
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埋夜冬(プロフ) - 桧さん» 返信遅くなりすみません!続編にいくので、引き続き応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2021年9月7日 18時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
桧 - めちゃめちゃ面白いです!!更新楽しみに気長に待ってますね!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: f7e0d06981 (このIDを非表示/違反報告)
ひらり(プロフ) - あおん。さん» コメントありがとうございます!ゆっくりとした更新になりますが、これからも応援の程宜しくお願い致します! (2020年9月28日 13時) (レス) id: 39d75deffc (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - あおん。さん» ありがとうございます!ちまちま更新していきますが、これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年9月28日 8時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
あおん。 - 面白いです!更新楽しみにしてますね! (2020年9月28日 4時) (レス) id: 71950dc544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜 冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2020年3月1日 13時