【BL】コスプレしたらヤンキーに気に入られた【オリジナル】

16話［☆］ ページ33

父さん、母さん。
助けて下さい。生命の危機です。
そう心の中で思ってしまうほど、桜はヤバかった。あぁ、嫌だ…。逃げ出したい。
でも、逃げ出したらダメだって言われたし…。僕は早く帰ってコスプレをしたいんだ！！作り終わって、ウィッグも来たんだから早く葬儀屋のコスプレをしたいんだよ！！
そう軽く心の中でブチ切れてるのを琉司は知っているのだろうか。

｢−−−の、−−−−−あのっ！｣

｢おっ！？悪ぃ、何だ？｣

帰り道、という名の連行をされている真っ最中の桜。何故か掴む所を腕から手首に変えられて、琉司は先を急ぐ。

｢お姉さん、どうして僕に会いたいって…？｣

そういえば、理由を聞いていなかったと思い出し聞く。琉司から急いでいる、という気配はしていたが説明されていなかった。

｢写真を見られちまったんだよ。かぐや様のやつ。アイツ勝手に部屋入って物取ってくから…。それで連れてこいって｣

中々に大変な家庭のようだ。

｢やべぇ奴だけど大人しくしときゃそのうち飽きっから、一言も喋んなくていいぞ｣

その言葉に昔の事をふと思い出す。
今や、父である葉鍵一優と母である葉鍵花霞の間に子供がいる事は周知の事実。
僕だと分かっているものの、報道陣が来ないのは昔2人が報道陣に向かってブチ切れたからだ。
そこから報道陣は来なくなった。
あの時の2人は物凄く怖かった。
報道陣が来た時2人は決まって｢喋るな｣｢喋らなくていい｣と言っていた。
ふと彼に2人が重なった。
彼と2人は違うと振りかぶって重なった影を追い払う。
2人が帰ってくるのを心待ちにしているから重なっただけだと、自身に説得させる。

だが、ヤバい奴という言葉を聞いて桜の中にある琉司の姉という人物像が悪い方へと傾いている。
琉司の姉に会った途端に倒れそうな程だ。

｢…着いたぞ｣

桜程の豪邸じゃ無いものの、琉司の姉と琉司だけで住むには十分に大きすぎる程だ。

｢いいか？逃げんなよ？…俺だってお前をこんな目に遭わせたくはねーんだ。でも姉貴の方がヤバくて怖ぇ。だから喋らずに、下でも向いとけ。学校でやってるみたいンでいいからよ｣

普段から桜は教室の隅で本を読むかスマホを弄っている。あんな風にしていろ、という事だろう。

｢行くぞ。準備いいか？｣

頼むからそんな事を聞かないでくれ。そう言われたら逃げていいと思って希望を抱いてしまうから。
琉司は玄関のドアを開けた。

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