11話[♪] ページ22
家に戻り着替え終わった桜は琉司と1階へ戻った。ふわわんとしたソファーに座る。琉司は写真や動画を見返しては驚いたりニヤニヤしたり真顔になったり、久しぶりに表情筋が細かく動いていた。
特にあの庭の写真は琉司の中で『最強にヤベェ』らしく、被写体本人を前に良さを長々と語る始末。恥ずかしいからもうやめて下さい・・・、という桜の言葉は聞こえていなかった。
「ヤベェよこれ。マジでかぐや様だわ。神棚に飾る」
「神棚に飾られても神様は困ると思いますよ・・・」
「は?神様も喜ぶだろ。俺が神だったら喜ぶ」
でしょうね!とツッコめる人はここにはいない。桜も「はぁ・・・」と曖昧な返事を返した。
「てかよぉ、あれ庭師がやったんだろ。めちゃくちゃ綺麗だな。やっぱりこういう家って使用人とかいるんか、かぐや様ん家みたいに」
「いえ、いるのは庭師だけですよ。家のことは僕がやってます」
「は!?このめちゃくちゃ広ぇ家を!?」
琉司はぐるっと部屋を見渡した。3階まであって、ひとつの階でも部屋の数が多いし広い。掃除などを全て一人でやるにはかなり辛いだろう。
「大変とかの次元じゃねぇだろ。むしろ掃除だけで1日終わんじゃねぇの」
「まぁさすがに毎日全部屋掃除は難しいですけど・・・日にちで掃除を分けたとしても長くかかりますね。おかげで新作の衣装を作る時間がどうしても足りなくて・・・」
バッと琉司が桜を見る。眉をギュッと寄せた顔はなかなか迫力があって、桜は草食動物のように怯えた。
「新作の衣装を作る時間が、無ぇだと・・・?」
ドスの効いた声に桜はコクコクと頷く。否定したら殺られそうな気配を感じた。怖い。
「おい、取引しようじゃねーか」
「と、取引・・・?」
ビクビクしている桜に琉司はゆっくりと近づく。その分桜は下がる。まさしくカツアゲされている構図だ。
「俺が、毎日この家の掃除をしてやる。だからてめぇは衣装作りに専念しろ。どうだよ?のるか?・・・それとも断るんか」
最後の言葉が最も低かった。断ったらどうなるか分かってんだろうなという脅しが入っている気がする。
琉司は基本、喧嘩は買うタイプだ。自ら売りはしないが売られた喧嘩はしっかり買い、二度と売ってこないようにコテンパンにする。喧嘩の中にはもちろん脅しも入る。今は脅しレベルMAXの状態。
そんな状態の琉司にヤンキーでもない桜が逆らえるはずもなく。
「ののの、のります・・・ッ!」
承諾してしまったのだった。
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埋夜冬(プロフ) - 桧さん» 返信遅くなりすみません!続編にいくので、引き続き応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2021年9月7日 18時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
桧 - めちゃめちゃ面白いです!!更新楽しみに気長に待ってますね!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: f7e0d06981 (このIDを非表示/違反報告)
ひらり(プロフ) - あおん。さん» コメントありがとうございます!ゆっくりとした更新になりますが、これからも応援の程宜しくお願い致します! (2020年9月28日 13時) (レス) id: 39d75deffc (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - あおん。さん» ありがとうございます!ちまちま更新していきますが、これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年9月28日 8時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
あおん。 - 面白いです!更新楽しみにしてますね! (2020年9月28日 4時) (レス) id: 71950dc544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜 冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2020年3月1日 13時