3話[♪] ページ6
朝、学校に来た。別に学校が嫌いなわけではないが、楽しいわけでもないので気が向いたときぐらいしか行かない。テストは受けなければ両親に連絡がいってしまうので仕方なく受ける。
今日の目的はかぐや様のコスプレをしていた奴を探すこと。クラスの奴の中であの時俺の名前を呼んだ男を探す。
ガラリとクラスの扉を開けた。わいわいと賑やかだったクラスの皆が、来た人物を見て固まった。シン、と静まり返る。
こういう状態が心の底からめんどくさい。来ただけで何故黙る。
まぁいい。とにかくかぐや様を見つけなければと辺りを見回す。
琉司は普通に見回しているつもりなのだが、目付きが悪いためギロリと睨んでいるようだ。周りが怯え出す。
「……ウッゼェな」
舌打ちをして用意されている自分の席に座る。担任と"話し合い"をして窓側後ろの端の席にしてもらったその席で、未だ怯えているクラスメイトを見た。
あの時のかぐや様はどこにいる?あの時の声の奴は誰だ?
うるさいお調子者のアイツでも、話しかけたら絶対に吃るアイツも、あの時の声とは違う。
あまり聞いたことない声の奴…。
ふと見つけた。廊下側の1番前。俺とは真反対側の席の奴。
クラスの中でアイツ以外の奴の声は全て違う。ならばもうアイツしかいないだろう。
席を立つ。そいつの前に行くとそいつは顔を上げた。
黒髪黒目、特に目立ったところもない普通の人。それが第一印象だった。
「おい」
「は、はい……」
ビクッとなった彼は小さな声で返事を返す。
「てめぇ、名前なんてンだ?」
周囲が遠巻きにこちらを見ている。助けようとする勇気のある人はこのクラスにはいなかった。それどころか、ターゲットは彼かと安心してしまう者までいる。
「あ、は、葉鍵桜…です」
間違いない。彼はあの時のかぐや様だ。この声だ。
「俺の名前言ってみろ」
凄むと目を泳がせた彼は諦めたように名前を言った。
「神樹琉司」
やっぱりそうだ!
あの時、めちゃくちゃ完成度の高いかぐや様をやっていたのはコイツだ。
「ちょっくら付き合えや」
顎で外を指すと、何を言われるのか分かっているらしい彼はこの世の終わりみたいな顔をして頷いた。
反対に琉司はソワソワしていた。かぐや様の中の人がまさかクラスメイトだなんて。今まで失礼なことをしていなかっただろうか。というか、頼んだらかぐや様やってくれるだろうか。ついでにセリフまで言って欲しい。
わくわくしながら人気のない屋上へ続く階段を目指した。
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埋夜冬(プロフ) - 桧さん» 返信遅くなりすみません!続編にいくので、引き続き応援よろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2021年9月7日 18時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
桧 - めちゃめちゃ面白いです!!更新楽しみに気長に待ってますね!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: f7e0d06981 (このIDを非表示/違反報告)
ひらり(プロフ) - あおん。さん» コメントありがとうございます!ゆっくりとした更新になりますが、これからも応援の程宜しくお願い致します! (2020年9月28日 13時) (レス) id: 39d75deffc (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - あおん。さん» ありがとうございます!ちまちま更新していきますが、これからも応援よろしくお願いいたします! (2020年9月28日 8時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
あおん。 - 面白いです!更新楽しみにしてますね! (2020年9月28日 4時) (レス) id: 71950dc544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜 冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2020年3月1日 13時