77冊目 ページ38
二人の事情に、彼女は呆然とした。つまり彼らは結婚すると言うことか?一生をもらうってそういう意味か?
「それはどういうこと?一生って普通に一生であってる?何その結婚認めてくれみたいな言葉」
今ならまだ冗談で済ませられる。美智子はそう思いながら引きつらせた顔で言うと、二人は何も言わなかった。沈黙は肯定だ。彼らは本気であると言うことになる。
「A、本気で言っているの?」
ピリッと辺りに緊張が走った。この声のトーンの母はとても怒っている時だ。ぐっど湊の手を握りながら頷く。
「ほ、本気だよ。俺は湊さんのことが好きで、将来死ぬときまで一緒にいたいって思ってる」
「そういうことを聞いてるんじゃないのよ」
好きだから、一緒にいたいから。それですべて解決できるなら世の中はこんなに難しくなっていない。
「他の人たちと違うことをする。常識から外れる。世界にはそういう人たちを変な目で見る人もいるの。噂されて後ろ指を指される時もある。そういう風当たりに耐える覚悟が出来てるのかって聞いてるの。生半可な気持ちで、好きだからって思いだけじゃ辛くなるだけよ。やめなさい」
美智子の言う通りだ。湊の小説のファンはBLに慣れているので大半は祝福してくれるだろう。だが世間ではどうだろうか。もちろん否定派の意見は出てくる。現実ではBLを見たくないという人もいるだろう。
湊の小説が売れなくなるかもしれない。湊に関連した人に迷惑が掛かるかもしれない。最悪、湊と別れて仕事をやめなくてはならない。
外で簡単に手を繋ぐことも出来ないし、景色が綺麗なところでキスも出来ない。世間はまだ現実世界での同性愛を、一般とは違うものとして認識しているから。
「生半可じゃないよ。簡単じゃないことなんて分かりきってる。それでも、風当たりが強くても、俺は湊さんと一緒がいいんだ。両想いになれたときから覚悟はできてる」
Aはしっかりと美智子を見つめた。
今まで、こんなにしっかりと息子が自分の意思を言った日があっただろうか。いつも少し控えめで、他人の世話を焼いて、自分のことは二の次にするような子だったのに。
「九条さんの方はその覚悟はあるの?」
「もちろんです。Aが俺を受け入れてくれた時から、どんなことからも守ると決めました」
共に乗り越えることも。俺のすべてを変えて、進ませてくれたのはAだから。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時