74冊目 ページ35
もっと激しく否定されると思っていたので驚いた。帰り道、湊とAは認めてもらえた嬉しさと驚きで興奮が冷めていない。
「それじゃ、今から行こうか」
「え?どこにですか?」
電車に乗って帰ると思ったら湊はまだどこかに行くらしい。まだ夜まで全然時間はあるがどこへ行くのだろうか?
「Aの、両親のとこ」
パチパチと瞬きをして湊の言葉を理解したAはバッと顔を赤く染める。
お互いの両親のとこに行くなんて、まるで……。
困り顔だが嬉しそう、といった器用な表情を浮かべたAを見て、湊はクスッと笑い耳元に口を近付けた。
「――――何だか結婚するみたいだね?」
「ッ〜!!」
思っていたことを言い当てられ、程よい低音で囁かれ、声を出さないのに必死だった。こんな人がいっぱいいるところで何てこと言ってんだ。心臓に悪すぎる。
「も、もう……!」
小声で怒ると微笑んで「ごめん」と言ってポンと頭を撫でられた。これは絶対悪く思ってない。
ドキドキと鳴っている心臓を落ち着けるために湊から目を逸らす。湊と目が合ったらまた跳ね上がってしまいそうだ。
そこで携帯が震える。メールのようだ。
スマホを取り出し見ると『母さん』の文字。
『A、元気にしてる?
ちょうど休みが出来たので都会に遊びに行きたいと思っているよ。今週の休みにね。ついでにAが居候しているって言う九条さんにも会いたいから言っておいて。お土産に家で採れた野菜届けるからね。』
「え……」
「どうしたの?」
湊が携帯を覗く。文を読んで湊も「タイムリーだね」と驚いて笑った。
「いいじゃん、来てもらいなよ。俺も会いたい」
「え、いいの?すごくうるさくてサバサバしてる人だよ。よく、そんなこと言う?ってことも言っちゃうような人で……」
「うん、それでもAのお母さんなんでしょ?だから会いたい」
これじゃ本当に結婚するみたいだ。これで母からも許可が下りたら、ささやかな結婚式をやりそうだ。
「湊さん……ありがとう」
「ん、俺、認めてもらえるように頑張るから」
ここが電車の中でなかったら、思い切り抱き締めているところだ。 ただ電車の中だから、湊の袖を掴みはにかんだ。
その仕草があまりにも可愛かったから、家に着いてからとびきり甘いキスをした。
家まで我慢した自分を褒めてほしいところだ。と湊は言ったがAは赤い顔と潤んだ瞳で「もう!」と怒っていた。上目遣いはずるいと思う。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時