61冊目 ページ22
湊は初めから話した。
愛川から電話が来たこと、嘉川の話と手を取ろうとしたAのこと、嘉川の話を断ってAを連れていったこと。そして、キスのことを。
話の展開が進んでいく度に湊の体は縮こまっていく。声も小さくなって、次第に顔が見えないように腕で覆いだした。
「行動しろとは言ったけどさぁ!順番ってものがあるじゃん!何なの!?あんたの思考回路は全部端か端なの!?0と100しか存在してないの!?このポンコツ!!」
恋愛小説家だと?嘘つけ自分のことにも相手のことにも気付けないくせに。考えたらまたイライラしてきた。もう何発か殴っても……。
「うん。俺、すごいポンコツだったって昨日気付いた」
小さな声でそう話す湊に、凛音の怒りが止まる。ポンコツじゃないと言い返してくると思ってたのに。
湊はチラリと凛音を見た。
「俺さ、Aのことが好きだ。多分出会った頃から惚れてたと思う。本当にポンコツどころじゃないよね……」
ごめん、と湊は呟いた。
「そのごめんは僕に言うことじゃないでしょ。Aに言いなよ。ってか、今更気付いたの?僕初めに言ったよね。『Aはあんたに渡さない』って」
最初に出会った時のことだ。敵対心むき出しで睨み付けられたことは今でも記憶に残っている。
だが、まさかその時から気付いていたのか?
「当たり前じゃん。言ったでしょ、ずっとそういう奴等からAを守ってきたの。Aに気がある奴とそうじゃない奴の違いくらい分かる」
それくらい、Aのことが好きだったのだから。
「あんたの気持ちは分かるよ、僕も同じだから。そんな僕からのアドバイス」
凛音は立ちあがり湊を見た。その顔は、苦しそうで、どこか誇らしげだった。
「ちゃんとAと話して。このまま終わるなんてあんたも嫌だろうし、そうなったら僕はあんたを許さない。話さなかったら本当に僕がAをオトすからね!」
ふんっと顔を背けて玄関へ向かう。どうやら話は終わったみたいだ。湊が追いかけて玄関まで行くと、初めて会った時と同じように睨まれた。
「大切なら、今度こそ守りきれ。ポンコツ小説家」
ロイヤルミルクティーごちそうさま!と言って凛音は歩きだした。
「ありがとう!」
今年一番の大声で言うと凛音は一度止まり、また歩く。
湊はあんなに後悔して萎れているから知らないだろう。
――――――『どうしよう』『キス、されちゃった』
Aがどんな顔をして、凛音の家に来たのかを。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時