57冊目 ページ18
湊はAを引っ張りながら人気のない路地に入る。この辺りは活気があるため不良もいない。その分路地に入れば、誰もいない無の空間だ。
路地に入り少し歩いてから、湊は掴んでいた手を離した。
壁に追い詰めるようにAを見る。
「自分が何しようとしたか分かってる!?」
とても冷静ではいられなかった。もっと傷付けてしまうほどきつく、思っていることをそのまま言いたかった。
「わ、分かってますよ!」
「じゃあ、分かった上で手を取ろうとしてたの!?それがどれだけ自分を犠牲にするか知っていて!?」
あまりの湊の剣幕にAはどんどん壁に寄る。もう背中と壁が当たってしまって逃げ場がない。苛立たしく溜め息を吐いた湊は自身の前髪を乱暴に掻く。
「何で……?どうしてそんなことするの」
呆れられたような口調にAは慌てる。湊が何で怒っているか分からないから、どう返したらいいのか分からない。
「湊先生の小説が有名になれるなら、何だってしたいんです!俺はもっとたくさんの人に貴方の小説を読んでもらいたい!」
「Aを犠牲にして得られる名声なんてほしくない!そんなことAに望んでない!!」
聞いたことない程の大声で湊が叫ぶ。Aは何も分かっていない。怒っている理由も、あの話をOKしたら何をされるかも。
「ねぇ、もしあの話をOKしたらどういうことされると思ってる?」
湊はAの手首を壁に押さえつける。同時に距離を詰め、Aの両足の付け根に自分の足を入れた。
「こんな風に動きを封じるなんて簡単なんだよ」
怯えた瞳。こんなになるのにOKしようとしていたのか。だから分かっていないと言っただろうに。
湊はそのまま顔を近づけ―――――キスをした。
「ッ!?ちょ、みな…ッ、んっ」
離れようと暴れるAには間に入れた足を上にあげることで黙らせた。キスは止めない。息をしようとして開いた口に舌をねじ込んだ。
「まっ……ふ、ぁ……んぅ、あ」
上顎も歯列も舌も全て撫でる。ビクビク震えるAの瞳には涙が溜まっていく。
音を響かせ口を離すと、Aは荒い息をしながら床に座り込んだ。
「分かった?Aがしようとしてたことはこういうこと。もう二度としようとしないで」
「すみっ、すみませ……ッ!」
Aの体は震えていた。地面に涙が落ちる。当然だ。いきなり深いキスをされたのだから。それも担当作家に。
触れようとして、止めた。今何をしても恐怖だろう。
「ごめん」
それだけ言って、湊はその場を離れた。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時