37冊目 ページ40
頭がボーッとする、なんて表現は風邪のときによく聞くが、その言葉通りだと思う。余計なことを考えると頭が痛い。
ふと首もとが冷たく感じた。何だろうこれ。うっすらと目を開けると心配そうな顔をしている湊と目が合った。
「A！だ、大丈夫？」
「…みなとせんせい……」
声を聞いた湊は安心したようだ。ホッと息をついて微笑んだ。
「良かった。何かほしいものとかある？」
Aはゆっくりと首を振った。どうやら首もとには冷えたタオルがあるらしい。気持ちいい。
「そう。じゃあ熱測るね。そのままでいいから」
脇に体温計が挟まれる。自分の体なのに力が入らないことに驚きだ。
ピピピと機械的な音が聞こえた。
「39度……。まだあるな」
今が熱のピークだろう。体の怠さが尋常じゃない。
「あの、どれくらい、寝てましたか……？」
「今はお昼。倒れてからずーっと寝てた。出版社には電話しといたよ。あの編集長が１週間ぐらい休んでいいって」
休んでいいって、戦力外通告か？退社しなきゃ？
「退社は、いやです……」
キョトンとした湊は意味を理解してクスッと笑う。
「違う違う。明日から来なくていいとかじゃなくて、大事なことは終わってるからしっかり休んでねってこと」
熱のせいで思考が飛んでしまったらしい。とりあえず退社ではないので良かったと思う。
「お腹空いてる？」
「だいじょ、ぶです」
「そっか。じゃあもう一度寝て、起きたらご飯食べようか」
ご飯……。お粥かな。
だが湊は料理がからっきしではなかったか。作るのか？
「この前Aが買ってきてくれてたレトルトが残ってるから」
作品が完成したばかりの湊は疲れているので、そういう時のためのレトルトお粥をストックしてある。それなら湊も大丈夫だろう。
「それじゃあゆっくり寝ててね」
湊が立ち上がろうとした。どこかへ行ってしまうのだろうか。熱のときは寂しくなる。
気づけば湊の袖を掴んでいた。
「A？」
「……その、忙しい、なら、いいんですけど」
Aは袖を握る力を少し強めた。
「寝るまで、側に、いてくれると」
嬉しいです、という語尾は小さくなっていったが、湊には聞こえたらしい。
「もちろん」
座り直した湊はAの髪を優しく撫でた。
ついでにタオルを変えたので首が冷たくて気持ちいい。
「大丈夫。ずっと側にいるからゆっくり寝て」
撫でる手が優しくて、Aの瞼はすぐに下りてきた。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
