28冊目 ページ31
凛音との2回目の話し合いから約1週間。早速だが、ネタが尽きた。
自室の書斎で湊は机と頭をくっ付けて深いため息を吐いた。作家はゼロから想像してストーリーをつくる。当たり前のことだがそれでもゼロからつくるのは、いくら湊が感覚的に天才だとしても大変なのだ。
凛音とのコラボでつくる漫画と小説の話は同じものにする。この前凛音に渡した小説バージョンはまだ添削していないものだ。あれを一度返してもらい、Aに添削してもらってからもう一度漫画のストーリー兼小説として話を進める。
つまり、小説を先に完成させないといけないわけだ。
「ネタが尽きた……今までに全てやりきってしまった……」
今までの小説でネタをやりきった。どうしよう、何も浮かんでこない。
「湊先生、コーヒー持ってきましたよ」
1週間も経てば“湊先生”呼びも慣れたもので、もう恥ずかしさはなくなったらしい。初めは「くじょ………み、みなと先生……」と言いつつ眉が困ったように八の字だった。かわいかった。まぁ今も一般男性より可愛い方だと思うし、こうやってコーヒーを持ってくるあたり良妻だが。
「ありがと……生き返る…」
淹れたてのコーヒーは良い匂いが漂い、体に沁みる。ほぅ、と一息ついたことでやっと頭がスッキリした。
「スランプですか?」
「うん……。ネタ何かない?」
起承転結はざっと考えてある。だが起から承にいくまでの経緯は考えていない。どうしたら承にいけるのか、そのネタが尽きたのだ。
「凛音はスランプになったとき、外に出たりして人に会うと言ってましたよ」
この前聞いたらしい。
外に出るなんて、湊には逆にストレスが溜まるだろう。
「自分のモチベーションをあげるために『可愛い!』とか『大ファンです!』とか言われに行くそうです。確かに凛音は可愛いですからね。こう言っては女性に失礼ですが、凛音より可愛い人は見たことないかなぁ」
ふふっと笑うAを見て、また心がぎゅっとなった。これを言葉にするなら、気に入らない、だ。
「俺は…?俺は、Aにとってどんな人?」
しまった。いきなり聞くのは変だ。ほら、Aが何度も瞬きしてる。
「湊先生は、見たことないくらい綺麗な人、ですかね!初めて会ったときからずっと思ってました」
「そう」
嬉しいような、何だか物足りないような……?
しかしAのおかげで思い付いたことがある。承に繋がった。
コーヒーを一口飲んだ湊は執筆を再開するのだった。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時