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19冊目 ページ21

ほぼ1日ぶりに見た湊の顔はやはり綺麗で、でもなんだか覇気がないように感じられた。

「く、九条先生すみません!俺、九条先生の事情、何にも考えないで……!!」

「いや、俺も、酷いこと言ったなとか思ってるから……」

バツが悪そうに顔を逸らした湊は、短く息を吐いてからAの方を向いた。

「話すよ、俺の両親のこと。作風に出すくらいトラウマだから、むしろ話したら楽になるかもしれないし」

「ですが……」

自分のせいで湊が傷ついた。これ以上傷を広げていいのだろうか。聞きたくないと言ったら嘘になるが、また距離が開くのは嫌だ。

「俺が言いたいって言っても駄目なの?」

その聞き方はずるい。それじゃあ断れないじゃないか。
Aが「それなら……」と頷くと湊はリビングに行きソファーに座った。自分の隣をトントンと叩きAに座るよう促す。Aが隣に座ると湊はポツポツと語り始めた。

「俺の両親は、どっちも自分に厳しい人だった」

精神科医の父と製薬会社で働く母。父にずっと愛されようと母は普段から頑張っていた。でも父が精神を患ってから前にも増して愛されている実感が感じられなくなった母は不倫を始めた。家になんか帰ってこず、食事はいつも1人。この広い家で、いつでも1人。殴る蹴るはなかったが、無視は死にたくなるくらいあった。

「1人が嫌いのはその時の反動。いなくなってほしくないのは1人だったあの時が怖いからだと思う」

そういえば一度、出版社から帰ってくると湊に抱きつかれたことがあった。あれはきっと、いなかったのが怖かったのだ。1人にされると思ったから。

「俺はそういう女々しい奴だよ。1人になりたくなくて、でも隣にいてくれるお礼として自分は何も返せないから、いつか離れてくんじゃないかって考えて一緒に生活してる奴だ。それでもまだ、編集者を続けてくれる?」

湊にとってこの質問にどれだけ意味のあることだったか。Aは胸が苦しくなった。

「当たり前じゃないですか!」

良かった。そう微笑んだ湊はAの頭に手を伸ばす。

ぐぅぅぅ。

お腹が空いた!と主張したのは湊の腹だった。喧嘩中、自己嫌悪して食べていなかったことを思い出す。
パチクリとお互い目を瞬かせ、次第にどちらかともなく笑った。

「ご飯作りますね!待っててください」

「ありがと。楽しみにしてる」

Aも湊も、仲直り出来たことにホッと胸を撫で下ろした。

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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます! (2019年8月17日 12時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます!自由に付けてくださって大丈夫ですよ!! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね? (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……!(照)ありがとうございます!ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います!お楽しみに!!☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年4月23日 23時

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