9冊目 ページ11
唐揚げのいい匂いが漂ってくる。実はプロット作成をとっくに終えていた湊はソファーから立ちあがり、ゆっくりとAの方へ歩いていった。
近づくと分かったがAは小さく鼻唄を歌っている。その姿に湊はバレないようクスッと笑い、揚がった唐揚げをつまみ食いした。
「あっ！ちょっと九条先生！」
「ん、美味しい」
本当は、こんなに料理上手だと思ってなかった。味もちょうど良く肉汁が出てくるなんて、男性一般の“料理出来ます”を舐めていた。
「もう少しで出来るんですから待っててください」
「たくさん頭使ったからお腹空いた」
子供かっ！！！なんて突っ込みもしてはいけない。まだ会って１週間すら経っていないのだから。向こうは大人気の小説家様、こちらは新人の編集者だ。格が違いすぎる。
あまりの部屋の汚さに怒ってしまったが、もっと客観的視点を持ち、湊に甘えず一定の関係でいなければ。このままだと湊が怒らないのでタメ口で心の声を言ってしまいそうだとAは思う。
「はい、できましたよ」
結局唐揚げ定食のように味噌汁をつけた。なかなかに美味しいものができたつもりだが、ちゃんと湊の口に合うだろうか。心配だ。
「いただきます。……料理、上手いね」
ふっ、と淡く微笑まれAの心臓が跳ねる。普段真顔で変わらない分、笑ったときの破壊力が半端ない。
「あ、ありがとうございます」
それでも褒められたことは嬉しい。どこかの本で『誰かのために作る料理は素晴らしい』などと言っていたが、なるほど、確かに素晴らしい。
赤くなった顔で目を逸らされた湊の脳内は今、妄想が駆け回っている。新人編集者という名の受けキャラがいる威力はとんでもない。
「あ、俺、九条先生のプロット見ておきますので先にお風呂入っちゃってください。沸いてますので」
湊は嫁か？と本気で突っ込みそうになった。危ない。久々にちゃんとした料理を食べ気づけば沸いている風呂に浸かり、出れば辺り一面家じゃないような綺麗さなんて。家事能力がズバ抜けている受けキャラは、攻めキャラを駄目にしてヤンデレルートに持っていきたいらしい。あ、今のでプロット出来た。
この一連の湊の脳内は、Aから見たら真顔で行われていることだ。ポーカーフェイスにも程がある。
今日はそのあとそれぞれ風呂に浸かり、お互い仕事を終えていることを確認してから眠りについた。
二人は思う。「一緒に過ごすには心の準備が必要」だと。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
