35冊目 ページ38
“……側にいるだけで幸せだって、思わないと”
使ったタオルを置きに洗面所へ入ったときに聞こえた、その言葉。
それは、昔湊が書いた小説の１節だった。だが何故その言葉を？湊は考えた。考えて、あることが浮かんだ。
もともと編集者は専属で１人を見るものじゃない。何人もの作家を抱え、毎日別の作家を相手するものだ。専属にしているのは愛川の厚意であり湊のワガママからきている。新人だからこそ、何人もの作家を相手にすることに慣れなければいけない。
つまり、Aは湊の専属ではなくなるのではないか？
湊の編集者はおそらくそのまま続けるだろう。Aの家はここなので帰ってくるのは変わらない。が、一緒にいる時間が減るのは確実だ。愛川に言われたのだろうか。Aはまだまだこれからだから慣れさせておいた方がいい。それは分かる。
分かるのに、この胸の痛みは何なんだ。何だか苦しいし、痛いし、嫌だと思う。意味が分からない。
もしかしたら、今日の夜か明日に言われるかもしれない。自分は、それを言われたときに笑顔で送り出せるだろうか。多分、というか絶対無理だ。
だからゲームをする予定だった今日は思い切り遊ぼうと思った。Aの思い出に残るように。俺の大切な思い出に、残るように。
だから最後にありがとうと伝えたかった。孤独に気付かせてくれて、前を向けるように力をくれたのはAだからだ。
でも“俺はこれからも湊先生のもとで編集者を続けていきたいです！”と言われたとき、心の底から安堵した。一緒にいてくれるんだと。
湊にとって最も恐れていることは孤独だ。Aがいることにこれだけ慣れてしまってはもう昔のようには戻れない。あの頃に戻るのが怖い。
だからこそ、涙が出そうになった。大丈夫なんだな、と感じたら泣きそうで、それがバレないようにくしゃりとAの頭を撫でた。もしかしたらもうバレていたかもしれないな。
Aが湊の専属編集者として居続けてもらうには、湊は面白い小説を書き続けなければならない。プレッシャーだ。でもAが傍にいなければ湊はやっていけない。彼がモデルで受のキャラを書くし、彼はガッシリと湊の胃袋を掴んでいる。こんなの初日から湊の敗けだ。
……だが、あの言葉が専属編集者を辞めるというものでなかったのなら、どういう意味を持っていたのか。ただ言っただけ？それとも、もっと別の理由？
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
