45歩目 ページ5
文化祭でピアノを弾かないか、という話を先生としていたせいで帰るのが随分と遅くなってしまった。Aへ帰りが遅くなるとメールしていないが大丈夫だろうか。Aは意外と心配する。自覚があるのかないのか、顔が物語っているのだ。
「はぁ……」
そんなときふと上から聞こえた、小さなため息。聞いたことのある声に蒼は階段の方を向いた。そこには愛しいAの姿があった。手にはゴミ箱。
確かAは先週掃除当番が終わったのではなかったか。では、そのゴミ箱は……。
「……手伝いますよ」
ゴミ箱はなかなかの重さだった。これを4階から運ぶのは大変だっただろうに。
慌てるAを無視して1階の倉庫までゴミ箱を運ぶ。袋をキュッと縛って放り込んでからAの方を向いた。この時間にここへ来る者はいない。
「何してるの？兄さん」
蒼は今、怒っていた。Aに掃除をさせた人達に対して。それと、断れない優しすぎるAに対して。
「あ……えっと……掃除、だけど」
「先週、当番終わったはずだよね？」
何でやってるの。という思いは伝わったらしい。怒っている理由が分からないAはせわしなく目を泳がせた。自分が何か悪いことをしたのかもしれない、と思うと手が震えた。
「迎えが来るから代わりにやって、って言うから。きょ、今日が初めてだから本当に何か用事があったんだと思うよ！」
誰に言われた、なんて聞かなくても想像がつく。桐島麗。もしくは彼女の取り巻きだろう。あの時、桐島麗はAに目を付けてしまった。
「兄さんは優しすぎるよ」
断れないのは分かっている。Aが断れない性格なのは蒼がよく知っている。だから、
「兄さんが断れないのは分かってるからさ……。そういうことがあったなら、俺を頼ってよ。兄さんの頼みなら俺は何でも聞くから」
蒼はそっとAの前髪をあげ宝石に自分を映した。悲しそうに眉を下げる自分が映る。その顔を見たAの心には罪悪感が募った。
「……うん。ありがとう、蒼」
その返事に淡く微笑んだ蒼は、スッと手を差し出す。
「一緒に帰ろう？」
雲に隠れていた夕日が現れて、微笑む蒼の横顔を照らす。金髪が輝いて世界が明るくなった。
「うん……！」
実はこれが、Aと蒼が初めて学校から家に一緒に帰った日だった。
疲れなんてどこかに吹き飛んだ。好きな人と何かをする、という威力は心がぽかぽかと温かくなって気持ちがいい。
一緒に帰りながら、Aはそんなことを考えた。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
