番外編 なんてね ページ38
しばらく撫でていると、蒼から静かな寝息が聞こえてきた。珍しい。蒼も疲れてたんだな。
蒼が聞いた膝枕に匹敵することができただろうか。クラスでも、女子の語る『相手にやってほしいこと』はかなり夢っぽいところがある。理想が高い。男はそんなに相手の考えてることを察してあれこれするなんて、エスパーじゃないんだからできない。
蒼の聞いた膝枕がどんな話か知らないが、理想通りであれば嬉しい。
蒼がAから離れないようにするには、相手の理想になるのが手っ取り早い。Aだって蒼が好きで、この関係があっさり終わってほしくない。
だからね、蒼。
「僕は暗いし、人見知りでしっかり話せないし、キスもド下手でムードなんて全然作れなくて、恋なんてしたことないからどうしたらいいかわからないから挙動不審になっちゃうこと多いけど、それでもいいなら」
これは蒼が寝てるから言える、本心。
「蒼のこと大好きだから、このまま離さないでいてくれると嬉しいな。………なんてね」
言いながら恥ずかしくなってきた。こうなるから蒼の前で言えないのだ。顔どころじゃなくて体が熱い。
ぐいっ―――――――――
「!?」
いきなり後頭部に手が回り蒼の顔の方へ押される。気付いたときには蒼と甘いキスをしていた。
「んっ……ふぁ……」
唇が離れて見えた蒼の顔は、満足したように微笑んでいた。
「俺は愛してるよ。それに、好きになったその日から離す気なんて更々ないし」
「お、起きて……!?」
いつから!?
「目を開けようとしたら可愛い恋人が可愛いこと言ってたから、つい寝たフリしちゃった。あんなこと、起きてたら言ってくれないでしょ」
うっ……確かに事実だ。蒼が起きてたら恥ずかしくて言えない。
「A、心配しなくても俺はA以外見えてないよ。俺は自分でも驚くくらいAが好き。だから」
蒼が起き上がったと思ったら、視界が反転していた。あれ?何で蒼が僕に覆い被さってるの?
「もっと教えてあげる、俺の気持ち」
こ、この流れはついに……!!
「あ、ちょっ、蒼……!」
「嫌?」
捨てられた仔犬の瞳で聞く蒼に顔を逸らしながら、Aは小さい声で言った。
「…ここじゃ、やだ」
つまり、ここでなければOKということ。
「じゃあ、俺の部屋に行こうか」
Aは真っ赤な顔のまま、こくんと頷いた。
お互い、それなりに調べていたのは秘密だ。
二人はやっと、恥じらいながらも一線を越えた。
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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1
作成日時:2019年3月5日 23時