番外編 熱と看病と ページ36
両親が仕事に行ってから蒼は早速寝かせる準備を始めた。
「A、大丈夫？熱計ろうか。ごめんね、少し動かすよ」
体温計を脇に挟ませる。鳴るまで待つ間に氷枕を用意しておく。
ピピピ、と機械的な音が聞こえた。38度9分。だいぶ無理をしていたらしい。
今日は久々の家族全員が揃った休日だ。こんな日は滅多にないから楽しみたかったのだろう。多分、自分でも兄と同じように取り繕うと思う。それほどまでこの休日は嬉しく、楽しみなものだった。
蒼は袋に氷枕とペットボトル、風邪薬を詰め込んでからAを抱き上げた。
「気持ち悪いだろうけど少し我慢してね」
抱き上げても力が入っていない体。熱い体温に荒い息。
朝から体調悪そうだったのに、無理をさせてしまったな。自分も、久々の休日を楽しみたかった。だから体調悪そうな微妙な変化に気付かない振りをしてしまった。
Aの部屋に着き、一旦布団にAを寝かせて氷枕を準備しAの枕と交換する。風邪薬も飲ませて、あとはAが寝るだけだ。
体調を気付かない振りしてしまった分、離れずに側にいよう。蒼はそう心に決めて、Aと目の高さが同じになるよう床に座った。
薬が効いてきたのか風邪のせいか、Aの瞳がとろんとしている。金の宝石は今は海だ。
「ほら、もう寝なよ。辛いでしょ。大丈夫。ずっと側にいるからね」
その言葉に安心したのか、Aはすぐ眠ってしまった。
だが数分後。
「おいて、かな…で……か、ぁさ」
Aの呼吸がずれる。苦しそうに体を丸め、瞑られている瞳からは涙が溢れてきた。
母の夢だ。死んでしまった、もう会えないと知ったときの夢。哀しさや苦しさなんて、周りには分からないだろう。
「A」
分からないから、今できるのは名前を呼ぶことぐらいだ。
「大丈夫、傍にいるよ。ずっと隣にいる。A、大丈夫だよ」
手を握り背中をさする。どんなに怖い夢でも、過去でも
「……蒼……」
蒼が名前を呼ぶと荒くなっていた息が落ち着き力が入っていた体が緩む。まるで蒼に名前を呼ばれることが魔法のように。
「隣にいるよ。当たり前じゃないか。こんな可愛い恋人を置いて、離れられるわけないよ」
俺はとっくに離れられない。魔法をかけられてるのは俺の方。
熱が下がったらそれを存分に伝えよう。覚悟しておいてね？
蒼は握ったAの手に騎士のようなキスを送った。
次の日。熱は下がったが離れない蒼に、Aはクスッと笑うのだった。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
